第13章 欲
花子 side
「毒消しに、麻酔。後、傷に効く薬草と…。」
今日の私はとても機嫌がいい。何故なら、なんとチョッパーさんからお家にお呼ばれされたのだ!たまたま彼が欲しがっていた薬草を私が持っていた。
ー花子は薬師なのか?ー
ー独学ですけどね。ー
だったら色々話そうと本日彼のお宅を訪問する。あの時のチョッパーさんの顔と言ったら!
「好きな人のお家に呼ばれるなんてっ…!」
まぁ実際はルフィ君達の船だから2人っきりでは無いだろうけど、チョッパーさんに誘われたと言う事が重要よ!
「さてと、こんなもんかな。」
ルンルンと逸る気持ちを押さえ玄関に向かうと私が開けるよりも早く扉が開いた。
「花子ー!」
「あっぶなぁっ?!」
バンッと勢いよく開けられた扉。あと少し反応が遅ければ扉と顔面が熱烈キッスしてたわ!
「ルフィ君!危ないじゃない!」
「悪ぃ、悪ぃ!サニー号に行くんだろ?」
「うん、今から向かうところだけど。」
何故君が?と首を傾げるとルフィ君は私を肩に担ぐと物凄い勢いで外に飛び出した。
「早く行こうぜ!皆待ってる!」
「ルフィ君、ちょっと待っ…っ?!」
ぐっと胃を押し上げる様な浮遊感。下を見ればいつもより遠い地面。ピョンピョンと屋根を飛び越えるルフィ君に担がれ、恐怖と混乱で発せられた私の悲鳴が島に木霊する。
ーーーーーー
「花子、連れてきたぞ~!」
「…。」ちーん…
「…おい、大丈夫か?嬢ちゃん、死にかけてるぞ。」
スチャッと船の甲板に降り立ったルフィ君の肩で私は力無く項垂れている。心配そうな顔でフランキーさんが私を見つめるけど、今彼に答える気力も体力も無い。
「うふふっ…!私は鳥よ…鳥になったのよ…!」
「なんかやべぇ扉開きそうだぞ?!」
「このまま何処までも飛び立って逝けそうだわ…。」
「お~い!戻って来~い!そっちに行ったら駄目だぁ~!?」
甲板に下ろされ座り込む私の肩をウソップ君が揺らす。あ…今川の向こうで死んだお祖母ちゃんが手を振ってる…。
「花子~っ!」
「ハッ…!チョッパーさん!?」
もう少しで川を渡ろうとした時、愛しい人の声が聞こえた。意識を取り戻し下を向くと涙目で私に抱き着くチョッパーさんの姿に、トクンと胸が高鳴った。