第12章 セカンドラブ
ジルの店は今日も人で賑わい花子も忙しなく働いている。
「はなちゃん!ビール3つ追加で!」
「はぁい!」
「花子~!こっちは煮魚なぁ~!」
「了解で~す!」
「「「…。」」」
いつもと変わらぬ光景。しかし、客達は探る様な目で花子を盗み見る。そんな怪しい行動をする彼等に同じくホールで働いているカナが呆れた顔で声を掛けた。
「皆さん、何ですか?はなちゃんを舐め回す様に見つめて…気持ち悪いですよ。」
「カナちゃん酷い!…なぁ、今日はなちゃん変じゃないか?」
「そうですか?」
そう言われ花子を見つめるも普段と変わらず仕事をする姿。気のせいではとカナが首を傾げると1人の客がバンッとテーブルを叩いた。
「いいや!絶対おかしい!見て!あの遠くを見つめる憂いを帯びた瞳!」
「…お店全体を見渡してるんじゃないですか?」
「思い詰めた様な溜め息っ!」
「…忙しいから疲れたんですよ。」
「ほのかに色付いた頬っ!」
「…今日、暑いですからね。」
次々と力説をする客にカナはそんなに彼女の事見てたの?気持ち悪っ!と引いていると、くすくすと笑い声が聞こえた。
「確かに…今日の花子ちゃんは少し変かもね。」
「…ミアさん。」
「ですよね!?もう俺達気になって、気になって!」
「酒も喉を通りませんっ!」
「…それ5杯目ですよね。」
グビィーっと一気に酒を呷りおかわりとグラスを差し出す客を呆れた顔でカナは受け取り、どう変なのかミアに尋ねる。
「そぉね…憂いを帯びた瞳、ふと漏らす溜め息、色付いた頬…彼女、もしかして…。」
含みのある言い方に全員ゴクリと唾を飲み込む。雰囲気に飲まれてかカナも緊張した面持ちでミアを見つめた。
「恋…しちゃったのかもね♡」
「「「?!」」」
「はなちゃんが恋~?」
にっこりと可愛らしい笑顔で言ったミアの言葉にピシャーンッと何かが落ちる音が聞こえた。それを聞いたカナだけはピンときていないのか首を傾げる。
「でもはなちゃん、シャンクスさん達に言い寄られても動じなかったんですよ?」
「それ以上の殿方を見付けたのかもね。」
妬けちゃうわと、少し拗ねた顔をするミアにカナは彼等以上の男がいるのかと更に首を傾げた。