第11章 パンクだね
花子 side
キッドの船が停泊している場所に向かえば、今朝まであった船は跡形も無く消えていた。きっと彼等はもう遠くに行ってしまっているんだろう。
「っはぁ…!」
てか、島を出るんなら今朝教えてくれても良かったじゃない!
ー【ワンピース】を手に入れたらお前を掻っ攫いにいく。ー
「だいったい…他の人に先越されたらどうするつもりよっ…!」
整わない息のままキッドに悪態を付いていると、黙って待ってろと彼の声が聞こえた気がした。
「はぁ…本当に最後まで自分勝手なんだから…。」
ねぇキッド。貴方の夢が叶うようにここで祈ってるね。
「でも…早く叶えないと…私他の人に盗られちゃうよ?」
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キッド side
「良かったのか?最後に別れを言わなくて。」
「あぁ。」
1人酒を飲んでいると何かを作っているキラーが話しかけてきた。
「お前にしては珍しいな。暴れ回られても連れてくると思ったんだが。」
「…出来るかよ。」
あんな花子の声を聞いちまったら無理矢理連れて行けるかよ。
ーもう…あんな思いはしたくないの…。ー
あいつの過去に何があったか知らねぇが、そう呟いた花子の声は今にも泣き出しそうだった。
「ほら、食え。」
「あ?」
キラーが目の前に差し出したのはロールキャベツ。何を作っていたかと思えば。
「…うめぇ。」
「それはそうだろ。花子直伝のレシピだからな。」
くそっ!やっぱ連れてくるべきだったか?花子を置いてきた事を少し後悔しながら、いつもとは違う味のロールキャベツを口に放り込んだ。
(…でも、なんか違ぇ。)
(花子と言うスパイスが無いからな。)
(…キラー、今のは寒いぞ。)マジで
(ファッ?!)