第11章 パンクだね
花子が叫んだ瞬間、店内はしんと静まり返った。全員固まっている中、いち早く正気を取り戻したジルが慌てて花子に駆け寄り思いっきり彼女の頭を叩いた。
「いったぁっ?!何すんですか?!」
「馬鹿っ!お前、俺の話聞いてなかったのか?!」
「…女ぁ、てめぇ良い度胸だなぁ!」
ぎゃいぎゃいとジルと言い合いをしている花子に地獄の底から這い上がる様な低い声が響く。
「え?怒ってる?」
「だから、お前はっ!」
「キッド、落ち着け…くっ…!」
「キラー!てめぇも笑ってんじゃねぇ!」
ふるふると肩を震わせ止めるキラーに苦虫を噛んだ様に顔を歪めキッドは花子を睨み付ける。
「頭がおかしいってのは俺の事か?」
「危ないはいいんだ。」
「花子!」
「俺は優しいからなぁ。泣いて許しを乞うなら許してやるよ!」
下から顎を掴まれ無理矢理上を向かされ花子の顔が歪む。その表情にキッドはニヤニヤと悪どい笑みを浮かべ彼女を見つめる。
「…小さい男。」
「…あ"ぁ"っ?」
「女が言った事を笑顔で流せないなんて、小さい男だって言ったの!」
「てめぇ…!」
ピキピキと額に青筋を浮かべキッドは花子を鋭い眼光で睨み付ける。しかし、ここで退いたら女が廃る!と花子もキッドを睨み返した。
「何?怒ったの?カルシウム足りないんじゃない?牛乳なら出すわよ。」
「花子!いい加減にっ!」
「余程死にてぇらしいなっ!」
手に力が入り掴まれた顎の骨が軋む。止めてくれと駆け寄るジルをキラーが止める。
「ふん!そんな懐が小さい様じゃ…貴方、海賊王になんかなれないわねっ!」
「?!」
痛みに涙を浮かべ自分を睨み付ける花子にキッドは目を見開いた。
「…てめぇ、今何つった?」
「何度だって言ってやるわよ!そんな小さい男じゃ、海賊王なんかにはなれないわよ!」
終わったと誰もがそう思った。キッドの怒りを買って無事でいられた者は誰1人いないのだから。
「てめぇは…【ワンピース】が存在すると思うのか?」
「さぁ?思うのは人それぞれだけど私はあると思ってるわ。」
「…そうか。」
手を離され顎を擦る花子をキラーから解放されたジルがキツく抱き締めた。