第11章 パンクだね
花子 side
「コハク~、よろしくねぇ~。」
早朝私はアギトさんに連れられコハクと沖合の海に出た。なんでも最近不漁らしく魚を追い込む様にアギトさんに頼まれたのだ。
「ごめんね、花子ちゃん。こんな事まで頼んじゃって。」
「いいですよ~!コハクも楽しそうだし。」
その代わりコハクのご飯少し分けてくださいねと言うと、アギトさんは任せろと逞しい胸板をどんと叩いた。
「花子ちゃんが来て大分経つね。」
「そうですねぇ~。」
「君には本当に感謝してるんだ。母さんが死んでから親父の奴、凄く落ち込んでいたから。」
悲しそうな顔をするアギトさんに私は何も言えなかった。家族を…それも最愛の人を失う悲しみはきっと凄く辛い事だから。
「でも君が来てから凄く楽しそうなんだ。母さんの墓参りにも毎日行くようになったし。」
「そうなんですか?」
「前は行くのが辛いからって年に1度ぐらいしか行かなかったから…。」
ありがとうと微笑むアギトさんに何だか擽ったい気持ちになって、それを誤魔化す様に海を見つめる。
「あっ!コハクが戻って来ましたよ!」
「よし!網を上げろっ!」
「「「はいっ!」」」
アギトさんの号令と共に船の人達が一斉に網を引き揚げる。網には沢山の魚が掛かっていて久々の大漁だと皆喜んでいた。
「大漁だっ!」
「花子ちゃん、ありがとう!」
「お礼はコハクに言ってあげてください。」
海面から顔を出すコハクにお礼を言うと得意気な顔をしてひと鳴きした。
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「さて、今日はこれで終わりだ。帰ろう。」
「あっ!じゃあ私はここで。」
コハクと少し遊んで来ると言えば気を付けてねとアギトさん達は何度もお礼を言いながら送り出してくれた。
「ん?…海賊船?」
アギトさん達を見送りふと後ろを振り返ると少し遠くに見えるのは、ドクロマークを掲げた大きな船。恐竜の頭骨のような船首と、肋骨が船体を包む様な独特な船。ロー君やシャンクスさんの船も個性的だけど、海賊の人達って皆変わった人が多いんだなぁ。
「凄く…パンクだね。」
エレキギターを掻き鳴らす音が聞こえてきそうなその風貌に思わず私は呟いた。