第11章 パンクだね
花子 side
今日はお店もお休みだからジルさんのお宅に遊びに来ている。ジルさんの息子さん夫婦も私が来るのを笑顔で出迎えてくれた。
「はなちゃん、いつもお店の事ありがとうね。」
「いやいや、私もお仕事いただけてありがたいです。」
彼女はエリーさん。ジルさんの息子さんのアギトさんのお嫁さんで今妊娠6ヶ月。元々はジルさんのお店のホールをしていたんだけど、妊娠が発覚して丁度この島に流れ着いた私が彼女の仕事を引き継いだ。
「体調は大丈夫ですか?」
「えぇ、悪阻も少し落ち着いて今は食べても食べてもお腹が空くの!」
「それは良かったです!」
元気な子が生まれてくるといいなと、エリーさんの少し膨れたお腹を撫でると彼女も柔らかく微笑み、愛おしそうにお腹にいる我が子を見つめている。その顔が凄く優しげで思わず故郷の姉を思い出す。
「いいなぁ~、こうしてると子供欲しくなっちゃいます!」
「あら?はなちゃんはいい人いないの?」
「そんなのいるわけ無いじゃないですかぁ。」
そう言う関係になった人はいるけど恋人ってなると今までそんなにいなかったな。それに自分が子供を育てるなんて想像も付かない。
「あれ?でも花子ちゃん、モテモテだって聞いたよ?」
「…誰に聞いたんですか。」
「漁師仲間からもそうだけど、親父が言っていたよ?うちの花子は大物にモテモテだって。」
「ジルさ~ん?!」
お酒を飲み可笑しそうに話すアギトさんの言葉に、あらぬ噂を立てたジルさんに声を荒げると、何だと言いたげにジルさんがキッチンから顔を出す。
「いつ!誰がモテモテ何ですか?!」
「間違ってねぇだろ。シャンクスもベックも、あの"火拳"のエースだってお前にメロメロだったじゃねぇか。」
「…ジルさん、オジさんが言うメロメロはイタイですよ。」
そりゃあ、好かれているとは思うよ?でも、そう言うんじゃ無くて友達?からかって楽しんでる的な?そんな感じだと思う。
「…俺、その3人が可哀想に思えてきた。」
「実際、店の客でも気がある奴はいるんだが…こいつがこんな感じじゃあな…。」
「きゃあっ♡やるじゃない、はなちゃん!」
首を傾げうんうん唸っている私をジルさんとアギトさんは哀れんだ様な視線を向け、エリーさんは1人きゃっきゃっとはしゃいでいた。