第10章 真っ直ぐな瞳
花子 side
エース君を自宅に招き入れお茶を出すと彼は背筋をピンッと伸ばしソワソワした様子。家に来るのは初めてじゃないのにどうしたのかな?
「何かあったの?」
「…。」
隣に座り顔を覗き込めばやっぱり落ち着かないのかキョロキョロと視線が泳いでいる。でも、意を決したのか私に向き直るとガッと肩を掴みゆっくりと口を開いた。
「明日…この島を出る。」
「…そっか。」
「俺はある目的でオヤジ達とは別行動をしてんだ。それを達成するまではこの島にもいつ来れるかは分からねぇ…。」
彼も海賊。1つの所に留まる事はない。分かってはいたけどいざ別れを突き付けられると、きゅっと胸が切なくなる。
「…寂しくなるね。」
「…そう思ってくれるか?」
「当たり前じゃない!」
短い間だったけどエース君と過ごした時間はとても楽しかった。暫く会えなくなると思うと寂しくなるのは当たり前だ。
「じゃあよ…俺の願いを聞いてくれるか?」
「?私に出来る事なら。」
真剣な彼の面持ちに私まで緊張してきた。ここまで切羽詰まった様子なんだもん。私に出来る事なら…。
「…抱かせてくれ。」
「…。」
…この馬鹿タレは何を言っているの?
「…良いお店、紹介しようか?」
「違ぇっ!花子を抱きたいんだ!」
真剣な顔をするからどんな重要な事と思えば…!私のドキドキを返せっ!
「本当はお前を掻っ攫って俺の側を離れない様に縛り付けて閉じ込めておきたい。」
「待って待って!」
「でも…お前を危険な目には合わせたくねぇ。だから…。」
怖い事を口走るエース君の肩を押すけど一向に離れる様子はなく、逆にどんどん距離を縮めてくる。てか、私が会う人達こんなんばっかじゃない?!
「花子を…感じさせてくれ…。」
「…っ。」
眉を下げ縋る様な仕草をするエース君に言葉が詰まる。何故か今ここで彼を拒めば私は後悔してしまうと…。
「…いいよ。」
「本当かっ!?」
「うん…それで、エース君が嬉しいなら…。」
コクりと頷けば彼は嬉しそうに破顔させ触れるだけの優しいキスをする。そんなエース君の様子にキュンと胸が高鳴ったのは私だけの秘密…。