第10章 真っ直ぐな瞳
花子 side
突然のエース君の登場にさっきまで騒がしかった店内がシンと静まり返った。楽しくお喋りしていたお姉様方も怒った様な彼の雰囲気に困惑している。
「お前等、この店に世話になってんだろ?だったらこの店の店主がどんな奴か分かっている筈だ。花子もそんな事をする様な奴じゃねぇ。」
「エース君…。」
ジルさんの事を思って怒ってくれているエース君に睨まれてお姉様方は気まずそうに顔を俯かせる。
「それに色目を使うならこいつよりお前等の方が遥かに効果的だろ?」
「…ん?」
「世間知らずで馬鹿正直で、こいつが色目を使ったところで可笑しくて腹が捩れるぞ。」
「おいこら待て、今何つった?」
私を庇ってくれたと思ったらエース君から出てくるのは散々な言い様。
「けどな、そんな馬鹿なこいつが俺は好きだ。」
エース君…優しく微笑みかけ良い感じで纏めようとしてるけど、キュンともこないし今の言葉絶対忘れないからね!
「そうだ!はなちゃんがそんな事をするわけねぇだろ!」
「それに花子の色気じゃジルさんは落とせねぇよ!」
「ちょっと!今言った人お会計倍にするからね!」
皆して酷い!私だってその気になればっ!多分…きっと?
「こいつの良さも分からない様じゃ、赤髪どころか俺も落とせないぜ?せいぜい三流海賊が良いところだ。」
「っ!」
フンと馬鹿にした様なエース君の口調にカァッと顔を真っ赤にすると、お姉様方はお金を置いてそそくさとお店を出ていってしまった。
「兄ちゃん、言うなぁ!」
「シャンクスさんの事があって、あいつ等も面白くなかったみたいだけどよ。はなちゃんがそんな器用な事出来る訳ねぇからな!」
確かに!と、どっと笑いが起きる店内。嬉しい筈なのに何でだろう…凄く腑に落ちない。
「良かったな!お前の事ちゃんと分かってくれている奴がいて。」
「…エース君。」
優しく私の頭を撫でるエース君を見上げるといつもの太陽みたいなキラキラとした笑顔を向けられた。嬉しいよ?嬉しいけど、取り敢えず…。
「1発殴らせて。」
よくも好き勝手に言ってくれたね。
(何でだよっ?!)
(当たり前でしょ!私だって本気出せばっ…!)
(花子さん!僕は色気を感じるよ!)
(ありがとう!愛してる!)