第2章 目が覚めると
ロー side
「…うるせぇな。」
自室で医学書を読んでいると外が騒がしい。いつも馬鹿やってうるせぇがここ最近は特にだ。その原因は…。
「ロー君?入っていい?」
「…入れ。」
この女だ。扉を叩く音と共に聞こえる声に入室の許可をする。山田花子。突然、同乗する事になったおかしな女。
「見て、また貰ったの。何の薬草かな?」
「ちょっと待ってろ。」
部屋に入ってきた花子は嬉しそうに手に持っている薬草を俺に差し出す。それを受け取った俺は本棚から薬草学の本を取り出しページを捲る。
「こりゃ…随分と珍しい薬草を見付けたな。」
「そうなの?」
花子が持ってきた薬草はある特定の場所にしか育たねぇ貴重な薬草だ。煎じて飲めば痛み止にもなるし、葉を患部に貼れば止血にもなる。
「随分と貢がれてんな。」
「熱烈でしょ?」
花子は悪戯っぽく笑みを浮かべ薬草学の本を覗き込む。
「ふ~ん…あっ、この麻酔薬にもなる薬草もあったよ。」
髪を耳に掛け本を眺める花子からふわりと甘い香りが漂ってくる。その香りに誘われる様に顔を近付けると、不意に顔を俺の方に向けた。
「…何?」
「…いや。」
思いの外距離の近い顔に驚きはしたももの花子は表情変えずに俺を見つめてくる。
「他には何がある?」
「何種類かの薬草と…後、珊瑚とか真珠があったよ。ペンギン達が運んでくれてるわ。」
こいつが来てから薬や財宝には困らねぇ。様は金の生る木だ。俺はふとあいつ等が話していた事を思い出す。
ーんじゃ、期間は花子の傷が治るまでな!ー
ー何を騒いでいる。ー
つい先日、ペンギン達がキッチンで何か話していた。聞けば誰が花子を落とすか賭けをしているらしい。
ー…また、下らねぇ事を。ー
たまにこいつ等は馬鹿な事を始め出す。気紛れに乗せた女を誰が落とすかなどと。
ーいいじゃないですか!それに花子がいたら薬や金に困らねぇ。ー
ーキャプテンは駄目ですよ!キャプテンが参加したら勝ち目無いんで!ー
元から参加する気はねぇ。確かにこいつがいたら何かと便利だが面倒事はごめんだ。
「皆、本当に優しいね。」
「…。」
あいつ等の思惑など知らず柔らかく微笑む花子に少し罪悪感を覚えた。