第2章 目が覚めると
花子がポーラータング号に乗って1ヶ月が経つ。肩の傷は塞がりかけているがまだ完治とはいかないので、花子は1日の大半をベットか甲板の上で過ごしている。
「暇だねぇ~。」
「暖かいねぇ~。」
ベポを背凭れにし花子は甲板で日向ぼっこをしている。そんな彼女に少し変わった事が起きていた。
「あっ!花子!今日も来たよ。」
「毎日、ご苦労様ねぇ。」
1つは鳥や海の生き物が何故か花子に贈り物を捧げているのだ。珊瑚、宝石、何処から採ってきたのか分からない薬草。まるで彼女に貢ぐ様に、彼等は足繁く花子の元に現れる。お陰でポーラータング号の宝物庫はパンパンである。
「いつもありがとうね。」
『キュイ、キュイ!』
『クゥ~!』
船の柵に羽を下ろしたカモメの頭を撫で海から顔を出すイルカに花子は微笑み掛ける。彼女に笑顔を向けられた彼等は、照れた様な甘える様な仕草を見せる。そして、2つ目の変わった事はと言うと。
「今日も凄ぇなっ!」
「シャチ、ペンギン。」
「えぇ~と…今日は、珊瑚に真珠、後何かの薬草だな!」
「俺が運んどいてやるよ!」
花子が起き上がれる様になって数日、ハートのクルー達が何かと彼女の世話を焼くようになったのだ。挨拶は勿論、体調は大丈夫か等。今も花子に贈られた貢ぎ物を運ぶのを手伝おうとしている。
「別に私1人で運べるよ?」
「まぁまぁ!怪我治ってないんだし、任せとけって!」
「それじゃあ…。」
後、花子には気になっている事がある。クルー達の距離感が近いのだ。彼等の性格からして別に変な意味がある訳じゃ無い事は分かっているが、自分より背の高い屈強な男に詰め寄られると無意識に腰が引けてしまう。
「ちょっと2人共!油売ってないで早くそれ運びなよ!」
「ゲッ!イッカクだ…。」
「くっそぉ…!今日も邪魔しやがって!」
後、必ずと言っていい程誰かが花子に絡もうとすると、何処からともなくイッカクが現れるのだ。悔しそうにするシャチとペンギンを睨み付け、イッカクは花子の顔を覗き込む。
「花子、大丈夫?何もされてない?」
まるで幼子の心配をする様な彼女の仕草に自分の方が年上なんだけどなっと花子は苦笑いを浮かべた。