第10章 真っ直ぐな瞳
暫くコハクと遊んでいた花子は満足したのか海から上がると岩場に座っているエースの隣に腰を下ろした。
「この鯱はどうしたんだ?」
「私が海で溺れてるところを助けてくれたの。それからずっと私のお友達。」
ねぇ~と、言いながらコハクの口にオレンジを放り込むとコハクも嬉しそうにそれを咀嚼する。
「そう言えばエース君は白ひげ海賊団の2番隊隊長なんだよね?やっぱり強いの?」
何気無しに言った花子の言葉にエースはキョトンとした後、信じられないと言うような顔をする。
「お前…俺の事を知らないのか?」
「え?エース君でしょ?」
「そうだがよ…。」
マルコ同様、白ひげ海賊団2番隊隊長エースと言えば"メラメラ"の実の能力を自在に操る大物海賊の1人。"火拳"のエースなどと言われ賞金額も5億も越える程名も知られているが、この世界の情勢を余り知らない花子は彼の事を知らない。
「…よくそんなんで今まで生きてこられたな。」
「え?褒めてる?」
「呆れてんだよ…。」
何処か世間知らずな感じはしたがここまでとはと、本気で花子の今後が心配になったエースはふと疑問を投げ掛けた。
「…海賊王って知ってるか?」
「それぐらいは流石に知ってるよ~。」
以前マルコを一般人だと勘違いした花子にこのままでは駄目だと、ペンギンが色々と世界事情を説明した。詳しい事は忘れてしまったが海賊王と呼ばれた男の事はよく覚えている。
「格好いいよね!1つの事を成し遂げてその人の言葉で時代が動いちゃうんだから。」
「…もし…海賊王に子供がいたとしたらどう思う?」
その言葉にう~んっと考える仕草を見せる花子にエースは探るような視線を送る。
「…会ってみたいかな。」
「犯罪者の子だぞ。」
「それ海賊の君が言う?別に関係無くない?それに王様の称号を与えられた人の子供だよ。…きっと強くて素敵な人なんだと思う。」
「?!」
ふわりと柔らかく微笑む花子にエースは目を見開いた。今までそんな事を言った人物をエースは1人しか知らなかった。
「子は親を選べ無いんだもん。誰の子供だろうがその子はその子でしょ?」
ー誰から生まれようとも人間皆、海の子だ。ー
「っ!」
込み上げるものを悟られぬ様、顔を俯かせエースは唇を噛んだ。