第10章 真っ直ぐな瞳
花子 side
(はぁ~…今日も疲れたぁ…。)
仕事が終わり家路を急ぐ私はどっときた疲れに思わず溜め息を漏らす。それにしても今日は驚いたな。まさか、エース君が白ひげ海賊団の人だったなんて。
(てか、普通道端で寝る?)
私が敵だったらすぐにやられちゃうよ。でも彼の事だからそんな事を気にしないくらい強いんだろうなぁ。
「よっ!」
「どわぁっ?!」
昼間のエース君の事を思い出し1人ニヤけていると突然後ろから肩を叩かれ、ビックリして大きな声が出た。
「わっ…悪ぃ…。」
「エース君っ?!」
後ろを振り向けば私よりビックリした様子のエース君。ドッドッと早鐘を打つ胸を押さえ見つめるとエース君は口を押さえ肩を震わせている。
「ふっ…!だぁはっはっはっ!お前っ、どわぁって…!」
「仕方無いでしょ!本当にビックリしたんだからっ!」
ちょっと思ったよ、私も!きゃあって可愛い声出せばと!でも、本当に驚いたらそんな余裕あるわけ無いじゃない!
「おっ…驚かせて悪かったなっ…ぶふぅっ!」
「ねぇ、謝るか笑うかどっちかにしなよ。」
お腹を抱えて笑うエース君に少しイラッとすると彼は笑いを堪えながら口を開いた。
「悪ぃ、悪ぃ!随分豪快な驚き方と思ってな!」
「殴っていい?」
まぁ、私が殴ったところでエース君にはなんのダメージも無いんだろうけど。
「本当に悪かったって!それより家に帰んのか?」
「うん、仕事も終わりだし。」
「送ってくよ、女の1人歩きは危ねぇからな。」
ニカッと笑い手を差し出され予想外の言葉に私は思わずポカンとしてしまった。
「…それとも迷惑か?」
「ううん、驚いただけ。それじゃあ、お願い出来ますか、紳士さん?」
「おう!任せろ!」
差し出された手を取りにっこり微笑むとエース君は私の手を握り締め歩き出した。
「もしかしてずっと待ってたの?」
「いや…そう言う訳じゃねぇが…。」
ぶつぶつと何か言っているエース君に首を傾げれば、うるせぇと声を上げ歩くスピードを速める。
「お前みたいな馬鹿正直で無防備な奴、1人にする方が心配だ!」
「そっか。」
前を向きずんずん進む彼の手はしっかりと握られていて、その優しさが嬉しくて私は繋がれている手にぎゅっと力を込めた。