第10章 真っ直ぐな瞳
花子 side
目の前に倒れている人を放って置く事も出来ず心の中でコハクに謝りながら私はその人を部屋の中に引き摺り込んだ。
「重っ?!」
見た目からして男の人だとは思ったけど細身な身体に反し凄く重くて腰が抜けるかと思った。
「怪我はしていないみたいね。」
「ぐがぁ~…。」
気持ち良さそうな鼾をかき一向に起きる様子の無い彼をベットに寝かせ、取り敢えず起きた時に手当てが出来る様に薬を作り始める。
(あのマーク…どっかで…。)
上半身裸だった彼の背中には見覚えのあるドクロマーク。見覚えがあるような、無いような…。
「まぁ…いっか。」
ーーーーーー
「んがっ!…あぁ~…よく寝た~!」
ベットで寝ていた男は目を覚まし大きく伸びをすると身体を起こし辺りを見渡す。
「部屋?」
いつの間に自分は宿を取ったのかと首を傾げ側にあるサイドテーブルに目を向ければ、愛用しているテンガロンハットとコップ1杯の水が置いてある。
「!うめぇ。」
ほのかに感じる檸檬の味。渇いた喉を潤す様に一気に飲み干しもう1度部屋を見渡す。生活感が感じられる室内は宿と言うより誰かの家の様。辺りを警戒していると微かに感じる人の気配。
「こっちか?」
別の部屋に続く扉を見つめ男はテンガロンハットを被るとゆっくりと扉に手をかけた。
「ん?あっ!もう起きて大丈夫?」
「…。」
扉の開く音が聞こえ振り返れば先程まで寝ていた男の姿に花子は柔らかく微笑み彼に駆け寄った。
「あんたが助けてくれたのか?」
「ビックリしたよ!玄関開けたら人が倒れているんだもん!」
取り敢えず座ってと言われ特に警戒する必要も無いと思った男は言われるがまま椅子に腰を下ろす。
「何であんな所で寝てたの?」
「いつもの事だ。島に着いたまでは覚えているんだが気付いたら寝てた。」
「何それ~?」
くすくすと笑う花子は本当に普通で、先程まで少し警戒していた自分が馬鹿みたいだと思った男は出されたお茶を受け取り啜った。
(私は花子。貴方は?)
(エースだ。)
(エース君は海賊?)
(…あぁ。白ひげ海賊団2番隊隊長のポートガス・D・エース。)