第10章 真っ直ぐな瞳
花子 side
拝啓、父上様、母上様、お姉ちゃん。
後、その旦那とちびっ子2名。
お元気ですか?最近知ったのですが私のいる所は夏島らしくて年中暖かい陽気に包まれています。
さて、突然ですが今…。
「…。」
「ぐぅ~…。」
目の前で人が生き倒れています。
ーーーーーー
シャンクスさん達がこの島を出て3日が経とうとしている。あの時は大変だったな…。
ー花子ー!カムバークッ!?ー
ーいや、去るの貴方の方よ?ー
ーまったく…あの人は。ー
私から中々離れないシャンクスさん。しまいには俺もこの島に住む!なんて言い出したから、ヤソップさんとルウさんに羽交い締めにされ船に乗せられていた。
ーベックマンさんも大変ですね。ー
ーもう慣れっこだ。ー
呆れながらもその柔らかい表情に本当に彼の事を信頼しているんだなぁ、なんて思っていると不意にベックマンさんが私の耳に手をやった。
ーなぁに?ー
ー動くなよ。ー
きゅっと耳朶を摘まむ感覚に言われた通りじっとしていると、手を離したベックマンさんは満足そうな顔をしている。
ーやっぱりこれにして正解だな。ー
ーん?ー
チャリッと耳元で聞こえる音に手をやると何か挟まっている感覚。首を傾げればポケットから何かを取り出し私に差し出した。
ー綺麗…。ー
ー花子に似合うと思ってな。ー
彼の掌にはピンク色をした綺麗な貝殻のイヤリング。艶のある光沢が太陽の陽射しでキラキラと輝いていて思わずそう呟くと、ベックマンさんはもう片方も私の耳に付けてくれた。
ーありがとう!ー
男性に贈り物を貰ったのは2回目だなぁなんて思い、嬉しくてお礼を言うと耳にあった手が頬に添えられ唇に柔らかいものが触れた。
ーベック!この野郎ー!?ー
ーマーキングだ。ー
ー…。ー
ニヤリと笑ったベックマンさんは最後にもう1度軽くキスをすると颯爽と船に乗り込んで行った。
(流石、女タラシ…。)
あの時のベックマンさんは本当に格好良かった…。思い出すと頬を熱くなるのを感じ私はそれを誤魔化す様にコハクの元に行こうと玄関の扉を開けた。
「…。」
「ぐぅ~…。」
何故か目の前に人が生き倒れている。
(ぐぅ~…。)
(あの~…。)
(…んがっ!…。)
(…。)どうしよう…