第8章 よそ見ばっかしてんじゃねェ
あの後、ものすごい剣幕で近付いてきたローに強く腕を掴まれると、そのまま引きずるようにして泊まっている宿に連れてこられたコノハ。
「ロー、どうしたのっ…?」
「どうしただと?どの口が言ってやがる。」
ローに押し倒され、腕をきつくベッドに縫い付けらると自然と目が合う。
「待って、なんか誤解ー
「聞きたくねェ。」
そう言うローはあの時と同じ目をしている。
それでも誤解を解こうと口を開いた瞬間、顎を掴まれローの舌がいきなり侵入した。
「ふぁッ…、ろぉっ!」
手繰り寄せた短い舌を勢いよく絡ませると、そのまま何度も舌を噛むロー。
「ん゛ぅ!やッ、ふッ…ん゛っ!」
何度も押し返したところで動かない胸に、ただ手を添えることしかできないコノハは、その痛みに耐えるしかない。
こんな痛いキスは初めてで、いつもと違うローに目に涙が浮かぶ。
それに気付いたのかローは噛むのを止めると、今度は長い舌を口内へ押し込む。
「んッ、はッ、ふぁッ…。」
丹念に舌を絡ませ、形を確認するように舌が口蓋を行き来する。
何度も繰り返されるそれに、コノハの口内は2人分の唾液で満たされていく。
「ふァッ、ゃ、んぁっ、んくっ…。」
その唾液を押し込まれると、自然と喉に流すコノハ。
飲みこみきれなかった唾液が顎を伝い、ローの舌が追いかけるようにそれを掬い取る。
「んっ、ハッ、ハッ…ハッ。」
ようやく唇を離され短く呼吸をするコノハのワンピースを勢いよく捲り上げると、そのまま脱がすロー。
「やっ…!」
下着しか身に付けてないコノハは顔を赤らめてローを見上げる。
そこにはいつもの優しい彼とはかけ離れた顔をしたローの姿。
口元を吊り上げ冷たい視線で見下ろされると、胸の前に置いてあった手を自然と強く握ってしまう。
無言でコノハの手を奪いベッドに縫い付けると、胸に顔を近付けたローは、容赦なく谷間へと噛み付く。
「ぃ゛っ…!」
突然の痛みに体が跳ね、目を見開くコノハ。
完全に正気を失ったローは、きっといつものように優しく抱いてはくれない。
涙を流しても拭ってはくれないだろう。
話すら聞いてくれないローにムカついたコノハは、目に涙を浮かべたまま目の前の獣を睨みつけた。