第15章 どなたでしょうか
「いや、ちょっと…!」
「なんで黙るんスか!!」
どうして2人がが揃うとこんなにも騒がしいのだろうか。
捲し立てるペンギンとシャチにローはようやく重い口を開ける。
「イカサマ云々の前にババ抜きなんて2人でやるもんじゃねェだろ…」
言ってやりたいことは山ほどある。
でもやっぱり馬鹿馬鹿しく思え、全部を言う気にはならなかった。
「えぇっ…そうなんスか…?」
ほら…
こっちが真剣に取り合うだけ無駄。
シャチの真っ直ぐな瞳を見て、ローは遂に言葉を失った。
「ハァ……」
そんな項垂れるローを見て、ペンギンは何か思い付いたようにあっ!と声を上げた。
「じゃあ、3人でやるのはどうすか?」
「あ…?」
「おー!!いいなソレ!」
「なっ、3人なら誰がババ持っているか分からねぇしな!」
「オ、オイ…待て……」
ローの答えを待つ間もなく進んでいく会話。
2人はこんなにも強引だったか?と考える余裕すら与えられない。
「じゃ、キャプテン座ってください!隣だと見えちゃうんでその辺にでも」
顔を強張らせたローのことなど目もくれず、ペンギンは素早くカードを配っていく。
シャチはと言えば、喜びを瞼に浮かべ子どものような表情でそれを見つめている。
「チッ…」
本来ならこんなフザけた提案に乗ることは無い。
だが、何せ今は気分が良い。
「仕方ねェな、一回だけだぞ。」
「おっ!キャプテンやりますか!」
「ヨッシ!絶対ェ負けねェ!!」
近年稀に見るキャプテンの気まぐれに2人は目を輝かせた。
「…イカサマなんてしたらタダじゃおかねェからな。」
そう言ってローはペンギンを見やる。
溜まった唾液をゴクリと飲み込む音が聞こえ、満足したようにローが前を向いた。
「あとは何を賭けるかだが…」
「金じゃないんスか?」
「んなもんつまんねェ。やるからにはリスクがあるものじゃねェとな。」
「う〜〜ん……」
そう言ってローは顎に手を置いた。
それを見たシャチとペンギンは意外と乗り気になっているローに嬉しさのようなものを感じている。
だが、一体何を賭けると言い出すのか…
その不安が頭を掠め、2人はなんとも言えない顔でその答えを待つ。