第8章 よそ見ばっかしてんじゃねェ
「あっ、ちょっと待って。まずはこれ買わせて?」
そう言うと店員にお金を渡し、水水肉を受け取る。
「それはおれンだってさっきも言っただろ!」
強引なルフィに少しムッとするコノハ。
「そもそもお金は持ってるの?」
その言葉に首を振るルフィ。
「お金ないならダメだよ。これは私の!」
「な〜、一口でいいからくれよ〜。」
なかなか食い下がらないルフィに、コノハの顔が引き攣る。
なんだか自分を見ているようだ。
「あげるあげないは一旦置いといて…、まずは話を聞いてくれない?」
納得いかない顔をしたルフィの目線は、コノハの手に持つ水水肉に一直線だ。
聞く耳を持ちそうにないルフィにため息を一つ吐くと、コノハが口を開く。
「イムサ島って知ってる?そこでシャンクスさんと会って彼に言われたの…。」
あの時シャンクスに言われた事をそのまま伝えたコノハ。
「シャンクス…。」
話を聞き終えたルフィは、よほど仲の良い相手であろう人物の名前をぽつりと呟くと、勢いよくコノハの顔を見る。
「確かにおれとお前は仲良くなれそうだ!お前の名前を教えろ!」
「ふふっ、コノハよ。」
照れ臭そうにコノハが言うとルフィがしししと笑う。
「じゃあ、コノハ!お前は今からおれの友達だな!」
その言葉に胸が跳ねた。
友達…。
そうだ、シャンクスさんに話を聞いた時ルフィに会いたいと思ったのは、彼と友達になりたかったからだ。
両親を失った後、気を紛らわせるように毎日薬屋を手伝っていたコノハは友達と呼べる人もいなかった。
初めて友達と言われて目に涙が浮かぶ。
「うんっ…!」
浮かんだ涙が溢れないよう、ゆっくりと頷くとルフィの目が丸くなる。
「お前、そんなことで泣くのか?おかしなやつだな〜!」
「おかしくないよ〜!」
隣で笑うルフィに自然とつられてしまう。
そのまま2人は色んな話をした。
ルフィのことに、コノハのこと。
彼女の年齢を聞いたルフィが目を飛び出させ、それに驚いたコノハが転びそうになったり。
今まで知らなかった楽しい時間を心から楽しむコノハ。
22歳にして初めて出来た友達は、麦わら帽子と笑顔がよく似合う青年だった。