第8章 よそ見ばっかしてんじゃねェ
「ったく、コノハは一体どこ行ったんだよッ!」
広場に置かれたベンチの近くで何度も辺りを見渡すシャチ。
ロー達と分かれた2人はベンチに腰を下ろし、他愛もない話をしていた。
急に尿意を催したシャチがトイレへ行き戻ってくると、コノハの姿がない。
あれだけここを離れるなと念押ししたにも関わらず、見事にその言いつけを破ったコノハ。
そしてシャチもローの言いつけを破ったのだ。
「バラされるどころじゃねェぞ…。」
怒り狂ったローの顔が頭にチラつくと、自然と肩が窄まる。
それでもここから迂闊に離れることは出来ない。
ロー達との集合場所でもあり、今自分がコノハを探しに行って行き違いにでもなったら大変だからだ。
ただその場で辺りを見渡すことしかできないシャチは、コノハの安否を願うばかりだ。
そんなシャチの苦悩などつゆ知らず、コノハはまたも水水肉の屋台の前にいた。
「ローが戻ってきたらサプライズで水水肉を渡そうっと!あんな事言ってたけど、多分ローだって気になってるはずだもん。」
目を細めるローを想像して、1人でニコニコと笑うコノハ。
「アレ、またお嬢ちゃんかい。ごめんね、残り一つしかなんだけどいいかい?」
本当は食べたかったけど、ローのためだ。
彼の喜ぶ姿を見れるなら自分の食欲ぐらい抑えられる。
「うん、大丈夫!じゃあそれくだー
「最後の一つ!?それじゃあ、それはおれンだ!」
いきなり言葉を被せられ、その声の主の方を向くとコノハの体があの時のように固まった。
そんなコノハを見て、隣に立つ人物が腹を抱える。
「お前、小っせェな〜!」
「っ…!」
歯を剥き出しにして笑う青年に一瞬怒りさえ覚えた。
が、もう慣れたことだ。
それに、彼には聞きたいことがある。
目の前にいる青年は間違いなく昨日見た人物だ。
このチャンスを逃したら二度と会えないかもしれない。
「あなた、もしかしてルフィ?」
そんな焦りから出た言葉に、ルフィは一瞬目を丸くすると、眩しいくらいの笑顔をコノハに向ける。
「あぁ、そうだけどよ、なんでおれの事知ってんだ?」
間違いじゃなかった。
確かに目の前にルフィがいる。
その現実に体がブルリと震えた。