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魔法の手【ONE PIECE】

第8章 よそ見ばっかしてんじゃねェ



「遅ェ。」

短くため息を吐くローは、コノハの言う通り本屋の前で待っていた。


「買いたい本があるんだけど、ここで待っててくれない?」

本屋の前を通るとコノハが自分を見上げそう言った。

本ならいくらでも買ってやると言うローに、自分で買うからと返すコノハ。
10分ほど本屋の前でそれを繰り返していると、ローが遂に折れた。

こういう時のコノハが頑固なのはよく分かっている。
それでもあまりお金は使わせたくない。

どうせ快くは受け取ってもらえないだろう。

なんとかしてお金を渡そうと考えていると、チリンとベルの音と共にコノハが店を出てきた。


「お待たせ〜!」

呑気に笑いながら近付くコノハに自然と手が伸びる。

「目的のモンは買えたのか。」

「え、あ、うん!買えた買えた!」

手を握り返し、何か焦った様子のコノハにローの声が一層低くなる。

「何を隠している。」

ローの放った言葉に体をピクリと跳ねさせると、目尻を下げるコノハ。


「今はまだ秘密!」

無邪気に笑いかけられると心が温かくなり、さっきまで気になっていた事が嘘のようにどうでも良くなった。



長い髪を掻き分け後頭部に手を伸ばすと、体を屈め小さな唇にキスを落とす。

「っ!?」

突然のことに驚いたのか目を見開いているコノハは油断だらけだ。

そんな彼女の肩に掛けるバッグにお金を素早く忍びこませると、ゆっくりと唇を離す。


「なっ!ロ、ロー!ここ外だよ!」

「だからなんだ。自分の女とどこでキスしようが俺の勝手だろ。」

さらりと恥ずかしいことを口にするローは、何事も無かったかのように再び歩き出す。


唇にはまだローの感触が残っている。
その感触にドキドキしていると、フッと聞こえる笑い声。

「あんなのじゃ足りねェって顔してるな。」

口元を吊り上げこちらを見下ろすローにドクンと胸が鳴る。

「そんなことないっ…!」

顔を背けたコノハの顔は湯気が出そうなほど真っ赤になっている。


自分の心をくすぐるような反応に、ローは自然と繋ぐ手を強く握った。
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