第8章 よそ見ばっかしてんじゃねェ
クルーと解散した2人は賑わう商店街を歩いていた。
「水水肉、食べ足りないー!」
自分の腕を掴みながらもう何度も言い続けるコノハにため息を吐く。
「まだ言うか。俺はコノハの作った飯が食いてェ。」
そう言われると素直に嬉しくなり顔が綻ぶ。
「ふふ、ありがとう。嬉しい!」
自分につられたのか目を細めるローに心臓を鷲掴みされたような感覚に陥っていると、2人の男女とすれ違う。
「なァ〜、ナミ〜!水水肉買ってくれよ〜!」
「もうっ!しつこいわね!買わないったら買わないの!それにアンタ、さっき10個も食べてたでしょ!」
10個…上には上がいるもんだ。
一体どんな人がそんなに食べたんだろうと振り返るとコノハの体が固まる。
目に飛び込んだのは麦わら帽子を被った青年と、その頬を引っ張るオレンジ色の髪の毛の女の子。
(麦わら帽子…。)
「俺の麦わら帽子を託したヤツがいるんだが、もしどこかで会ったら仲良くしてやってくれないか。コノハとは仲良くなれそうだ。」
あの時酒場でシャンクスが言っていた事を思い出した。
もしかして本人なのではと淡い期待が頭を掠めるも、すぐに冷静になる。
そもそもこんなに広い海でそんなに都合良く会えるワケがない。
仮に本人だったとしても、隣にはローがいる。
もしも自分が声をかけたら、彼ならきっとものすごい剣幕で怒るだろう。
いや怒るどころでは済まされない。
不機嫌極まりないローを想像し、体をブルっと震わせると前に顔を向けるコノハ。
「どうかしたか。」
いきなり後ろを振り向いたと思ったら数秒固まり、また前を向くコノハに眉間に皺を寄せるロー。
「ううん!なんかいい匂いがしたから振り返っちゃったの!」
子どものような言葉を口にするコノハに目を細めるローは、そうかとだけ言い小さな手を握った。
咄嗟についてしまった嘘に心が痛んだが、ローの意外な行動に驚くコノハ。
「えっ、あ、手…。」
「何か文句でもあるのか。」
顔を背けるローの耳はほんのり赤い。
「ふふっ、ないよ。」
そう言うとコノハはローの大きな手をギュッと握り返した。
触らぬ神に祟りなし。
この後、ルフィとコノハは再び出会うことになる。