第7章 この匂い嫌い?
「シャチお待たせ!」
パタパタと走るコノハがシャチに駆け寄る。
デッキに腰を落とすと傷口を圧迫していたスカートの切れ端を外す。
「痛むかもしれないけど、我慢してね?」
手際良く消毒をされ薬を塗り込まれる。
「悪ィな、本当。」
「何言ってるの、謝ることじゃないでしょ?」
そう言うと包帯を巻くコノハが続けて口を開く。
「この傷どうしたの?」
「あぁ、釣り針が刺さったことに気付かないで竿を振っちまったんだ。」
想像するだけで手首が痛くなり、つい顔を歪めてしまう。
「いつも皆んなのために沢山釣ってくれてありがとう。でも気をつけてね?それと、今度私にも釣り教えてね。」
肩をすくめ笑うコノハの優しい言葉に心が温かくなるシャチ。
「本当コノハは優しいなァ。キャプテンが惚れるのも分かる!」
その言葉に、包帯を巻き終えると赤くなった顔を隠すように患部をつつく。
「って!!」
「はい、おしまい!あんまり治らないようだったら、ちゃんとローに診てもらってね。」
顔を赤く染めるコノハは、子どものような無邪気な顔で笑った。
小さなことでもこうして頼りにされるのは本当に嬉しい。
もっと知識を身につけて少しでもみんなの力になりたい。
メラメラと湧き上がるやる気を感じていると、それを見ていたシャチが慌てるように口を開いた。
「コノハ、ありがとな!ただ、その格好がキャプテンにバレたら大変な事になるぞ!」
そうだった。
その事を完全に忘れていた。
「そうだね、まだ寝ている筈だから今のうちに着替えてくる!」
ヒラヒラと破れた裾を揺らしながら小走りで船内へと向かうコノハ。
「まだ寝ている筈って、コノハが部屋に入った時点で多分キャプテン起きてたと思うけどなァ。」
これから自分が怒られる事を安易に想像できるシャチは、逃げるように部屋に戻った。