第7章 この匂い嫌い?
塗り薬を取りに来たコノハは扉を静かに開けると、ほのかに香る消毒液の匂いに自然と顔を綻ばせた。
ベッドに目を向けると、シャチの予想通り昼寝中のロー。
朝コノハが着ていたパジャマを抱きしめながら寝ているローの姿に、胸が締め付けられる。
(…くぅっ。可愛いやつめ。)
自分以外には絶対見せないその姿に優越感すら感じる。
起こさないよう静かに部屋の奥の薬品棚へ向かうと、自分が調合した塗り薬と救急キットを手に取る。
(これで良しっと。)
部屋を出ようと踵を返すも、ベッドで眠るローの無防備な姿が目に入ると無意識にそちらに足が動いた。
横を向き、自分のパジャマを抱き締めながら規則正しく寝息をたてるロー。
意外と長いまつ毛に、通った鼻。
何度もキスを交わしている唇。
(あぁ、本当にかっこいいなあ…。)
日に日にローに惹かれていくコノハは、自分の行動を止めることなど出来ない。
(…ほっぺならいいよね?起きないよね?)
誰が見てるわけでもないのにキョロキョロ辺りを見回すと、頬にキスを落とす。
顔を離すと、今にも聞こえてしまいそうなほど鳴り響く心臓。
(してやったり…!)
その心臓の音と足音がローに聞こえないよう、静かに扉に手をかけると部屋を後にしたコノハ。
バタンと静かに閉まる扉の音と共に目を開けるロー。
実はコノハが扉を開けた瞬間から起きていたローは、なんとなく目を瞑ったままでいた。
普段から眠りの浅いローは、足音や物音ですぐに目を覚ましてしまう。
「アイツ、何してやがる…。」
情事中以外は恥ずかしいのか、自分からキスなどして来ないコノハ。
その彼女があろうことか寝ている自分にキスをしてきたことに驚きつつも、愛おしい行動に顔を赤く染めるロー。
「クソ…、覚えとけよ…。」
そう言うとローはコノハのパジャマに顔を埋め、もう一度目を閉じた。