第6章 女は大切にするんだぞ
腹ごしらえをし、その後コノハの生活用品やらを買い船に戻ってきた2人。
ペンギンに朝帰りだと散々茶化されたローは関係のない2人にも怒号を飛ばし、3人は逃げるように町へ出て行った。
静かになったデッキで本を読んでいると石鹸の匂いがふわりと鼻腔に届く。
その匂いの人物は隣に座り、なにやら自分を見ている。
刺さるような視線にいてもたってもいられなくなり、口を開く。
「…どうした。抱かれにでも来たか。」
その言葉に顔を赤くするコノハが愛おしくなり、額にキスを落とすと身を捩る。
「…ふふ、くすぐったいよ。別に抱かれに来たわけじゃなくて、これ見てほしいの。」
小さな手には折り畳まれた紙。
それをただじっと見ているとコノハが口を開く。
「島を出る時にね、ひげじいが船に乗ったら見なさいってポケットにこの紙を入れたの。」
「中身は確認したのか。」
コクンと頷くコノハの手から紙を受け取り、畳まれていたのを開く。
"いつかあの子がこの島を出ることがあったら、シャボンディ諸島に行くように伝えてあげて。あそこには世界一の情報屋がいて、きっとあの子の力になってくれるはず。それと、悪い男の子に引っかからないようにちゃんと見ててあげてね。"
コノハの母親が書いたであろう手紙。
いつか自分に迫る運命を分かっていたかのように、あらかじめひげじいに彼女を頼んでいたコノハの母親。
その行動に胸が締め付けられ、無意識に紙を持つ手に力が入る。
その様子を見ていたコノハがローの手を優しく握る。
「…そんな悲しい顔されたら私まで悲しくなるよ。」
その言葉にハッとし彼女に視線を向けるとふわりと笑うコノハ。
一番悲しいのは他の誰でもなくコノハ。
それなのに自分に笑顔を向ける彼女に申し訳なくなり、気付いたらその小さい体を抱きしめていた。
「…悪い男に引っかかっちまったな。」
「わっ、そっち!?シャボンディ諸島?の話じゃないのー?」
腕の中でジタバタもがくコノハをギュッと強く抱きしめると、観念したかのように背中に腕を回される。
「その話は航路の件も含めて、アイツらが戻ってきてからにする。」
デッキの上で強く抱きしめ合う2人をクルーは遠くから見守っていた。