第6章 女は大切にするんだぞ
微かな意識の中でコノハの声が聞こえる。
「やっぱり内出血してる…。」
次の瞬間、ヌルリと何かが自分の舌を掴み、口の外へと引っ張られる不快感に目を開ける。
「っ!あ、おはよう!」
急いで掴んでいた手を離し目の前でニコリと微笑むコノハ。
昨日の情事後、意識を失ってしまった彼女にローが風邪を引かないように服を着せてあげたというのに、何故か下着姿のコノハ。
「…朝っぱらからそんな格好で何してやがる。」
寝起きが悪いローにもお構いなしのコノハは再び目尻を下げる。
「シャワー浴びてたからこんな格好なの!それと昨日また噛んじゃったから、一応診察!」
「お前は俺が医者だというのを覚えてねェのか。」
すると首をブンブン横に振りローの腹に乗っかり自分を見下ろすコノハ。
「私の力で治そうかなって思って。」
全てを吸い込みそうな大きな瞳に見つめられ、下半身に熱が集まる。
「5秒以内にそこをどかねェと、今すぐ抱くぞ。」
その言葉に驚いたコノハは急いでローから降り、そのままベッドから転げ落ちる。
「ったー!」
「朝から本当に忙しい奴だな。」
手を差し出すとスルリと自分の手を掴むコノハ。
両手首には昨日縛ったせいでついてしまった痛々しい跡が残っていて、体に傷を作ってしまったことに胸が痛んだ。
「手首のことだが、…悪かった。」
突然ローの口から出た言葉に一瞬目を見開くと、自分の尻を指差すコノハ。
「手首だけじゃないでしょ!お尻もだよ!」
感情が昂ったとはいえ、叩いた行為に反省はしている。
だが
「…叩いた瞬間、嬉しそうに俺のを締め付けたのはどこのどいつだ?」
「っるさい!」
真っ赤な顔で自分を睨むコノハに愛おしさを感じていると、いきなり視界が暗くなり、何かがぶつかる。
ドスっという落下音に目を向けると、床には枕。
「んふふ、お返し!」
子どものような顔で笑うコノハの手には、もう一つの枕。
「っ、テメェ、許さねェ!」
こうして始められた枕の投げ合いは、空腹に負けたコノハの一言で幕を閉じた。