第6章 女は大切にするんだぞ
仕方がないとは言え傷付けてしまった。
昔なら女を追うなどあり得ないが、何故か彼女を追ってしまうのは愛おしく健気なコノハを自分の腕の中に閉じ込めておきたいから。
路地に入り、賑やかな酒場の前を急ぎ足で通りすぎるローの目の端に見たことのある顔が映る。
「アイツ…!なんでこんな所に…!」
中から吹き抜けになっている酒場。
外から見えるのは、男に囲まれ少し困り顔でグラスを手にするコノハ。
困り顔とは言え、たまに他の男に見せるその笑顔にフツフツと腹の奥から何かが込み上げてくる。
コノハの隣にいる男が空いたグラスに酒を注ぐ。
その男を見た瞬間ローの顔が強張った。
赤い髪色をした隻腕の男。
「赤髪のシャンクス…。」
俺はアイツを知っている。
というより、海賊なら誰でも知っている。
なんでこんな小さな村にいる?
いや、今はそれどころじゃない。
酒場に入ると聞き慣れた声で自分の名前を呼ぶコノハ。
「ロ、ロー!なんでここに…」
なんでここにだと。
お前こそなんでこんな所にいる。
「おお!お前がコノハの話していた色男か。女は大切にするんだぞ。」
「お頭が言っても納得できねェ!」
ガハハと声を出して笑う赤髪海賊団を前に、赤髪屋の言っていたことが引っかかる。
「コノハ、俺の何を話した。」
いきなり名前を呼ばれ体をピクリとさせると、それを見ていたシャンクスが口を開く。
「まあまあ、痴話喧嘩ならよそでやってくれよ。酒が不味くなる。…それに勘違いするなよ。俺がコノハを呼び止めたんだ。自分の縄張りである島に、今にも泣きそうな顔をした女がいたから放っておけなかったんだ。」
その言葉にハッとしたコノハが立ち上がり頭を下げる。
「あ、みなさんありがとうございました!色々な話を聞けて楽しかったです!」
「おう!仲良くやれよ!」
頭を再び下げるコノハの腕を掴み、その場を去っていく2人の背中を見てポツリと呟く。
「ルフィーにもあんな可愛い彼女ができればな〜。」
「アイツは女よりも肉だろ!」
涙を流しながら笑う一同の声が酒場に響き渡る。
手に持つ酒を喉に流し込み口元を吊り上げるシャンクス。
ハートの海賊団か。
登ってこい。テッペンまで。