第5章 また見惚れてんのか
「んー…キャプテンの事だからコノハが名前を呼んでくれるなら、さん付けても付けなくても嬉しいと思うぞ?でもなー…」
ペンギンの嬉しい言葉に顔を綻ばせるが、何か言いたげな顔をし言葉を詰まらせる彼に続けてと視線を送る。
「いや、最近キャプテン不機嫌だろ?多分俺らにだけ呼び捨てなのが気に食わないんじゃねェかな?」
まさに本気で悩んでいたこと。
いとも簡単に口から飛び出してきた言葉に思わず目を見開く。
やっぱなと笑うペンギンには全部お見通しのようで、自然と笑みが溢れてしまう。
「あんなにキャプテンが嫉妬深いとは俺らも知らなかったぜ。キャプテンに直接聞くのが一番早いぞ!」
「そうだね、直接聞くのが一番だよね!ありがとうペンギン!」
またなんかあったら言えよと言うペンギンは廊下へ続く扉に手を掛ける。
食堂の扉を開けたペンギンの顔が強張った瞬間、部屋の温度が急激に下がったような気がした。
「…おい、ペンギン。なんでお前がここにいる。」
タイミングが良いのか悪いのか、扉に立つローの姿。
「すいませんっしたーーーー!」
ローの横をくぐり抜け、全速力で走り去って行ったペンギンに目線だけ向け舌打ちをすると、こちらに向かってくるロー。
ああ、ここで聞いた方が良さそうだね。
「ろっー
「次の島についてだが、着くまでにあと1ヶ月はかかる。そこでお前の洋服やら必要なモンを買ってやるつもりだが、それまで寒くて着る物に困ったら俺のを使え。」
言いかけた途端にローに言葉を被せられ、驚いた顔をしてしまった。
「島!?えっ、ロ、ローさんの服!?」
突然の発言に目を丸くしていると私の反応を見て彼はクスリと笑った。
「…あぁ、そうだが。それで…さっき何か言おうとしてたか?」
そうだ。すっかり忘れてた。
「あー、その、ローって…呼び捨てで呼んでもいいかなーって。」
その一言に一度眉をひそめると、帽子を被り直し顔を背けるロー。
「…あぁ構わねェ。」
耳まで真っ赤な彼に胸が熱くなり、顔を綻ばせているといつの間にか後ろに回り込まれ、気付くと頸に痛みが走っていた。
チクッ
経験したことのある痛みにハッとし、勢いよく後ろを振り向く。
「…ククッ、男除けだ。」
見上げると満足そうな笑みを浮かべるローと目が合った。