第4章 生まれて初めて一目惚れというやつをした
今までに自分が経験したことのないそれ。
当たり前だ、小さい頃にお父さんとキスしたきり一度も人とキスなんてしていないのだから。
多分、ローさんは勘違いしている。
私があの時言った言葉足らずな答えのせいで、誰かとキスしたと思い込んでいる。
いや、確かにお父さんとキスした事はあるのだから間違ってはいないのだが…。
「…ロ、ローさん…。私…、キスぐらいした事あるってあの時言ったけど、相手はお父さんなの……。」
自分を見下ろす彼は、眉間に寄せた皺をさらに深くさせるとため息をついた。
「………なんだ、それがどうした。」
自分とは違い男の経験もないであろうコノハだが、自分と同じ22歳。
人を好きになった事がないとはいえ、キスの一つや二つくらい経験があるのだろうと納得しようとしたが、どこの誰かも分からない相手に怒りを覚えていた。
冷静を装ったものの、自分の空回り具合に反吐が出そうになる。
「…えっ。それがどうしたって…。わ、私のファーストキスの相手はローさんなんだよ?なんか、もっとこう…喜ぶとかないのかなって…。って、キャッ!?」
真っ赤な顔でそう言うコノハを気付いたらソファーに押し倒していた。
舐め回すようにコノハを見ると、恥ずかしいのか手で顔を隠している。
「…おい。手をどかせ。顔が見えねェ。」
フルフルと首を振るコノハの手を取りソファーに縫い付けると、目に涙を浮かべるその顔にひどく興奮する。
今すぐこのまま激しく抱いてやりたい己の欲望に、大切にしてやりたいという気持ちだけが理性をなんとか繋いでいる。
迫ってくるローの顔に自然と目が閉じる。
「…んっ。」
リップ音と共に離された唇。
さっきみたいな激しいのを想像していたからか、唇が触れるだけのキスに驚いていると自分を見下ろす一匹の獣がクスリと笑った。
「…物足りねェって顔してやがるが、怖いだろ。…無理に抱きたくはねェ。」
そう言うとローは覆いかぶさっていたコノハから離れると、ソファーに座り直す。
未だ赤い顔をしているコノハは、自分の心臓の音を聞いたままローの横で仰向けになっている。
「…起き上がらないって事は、続きをするってことか?」
その言葉にハッとし、勢いよく体を起こすとローの目をしっかり見つめ口を開いた。