第4章 生まれて初めて一目惚れというやつをした
「…お前だって知りてェ事がたくさんあるはずだ。その力だって、薬の知識だって、この島では何年いても平行線のままだ。」
頸で呟かれくすぐったいのか体が跳ねるコノハに、このままだと理性を保てなくなりそうになりゆっくりと体を離す。
「……っ、ローさんの優しさに甘えて一緒に船に乗りたい。薬の知識も、自分の力も…ちゃんと知りたい。…でも、ひげじいが心配なの。」
酒場でじじいと話していた内容を知らないコノハは困ったように言った。
「…そのじじいに頼まれたことだ。お前をこの島から連れ出してほしいって。」
なにそれと言わんばかりにコノハの目が見開くのを見ていたローは、クスリと笑う。
「あのじじいは、お前のことを俺に話して託すと言ってきた。…もう島を出ない理由はねェだろ?」
島を出ない理由は…、もうない。
なのに何故だろう、涙で視界がぼやけるのは。
「…うぅ、今後ともよろしくお願いしますっ……。」
ローはその言葉を聞きニヤリと笑うと、左手でコノハの後頭部を掴む。
ゆっくりとこちらへ向かせると、己の唇をコノハの唇に押し付けた。
「……っ!?」
突然の行動に目を見開くコノハ。目の前にはローの顔。
状況を理解できていないコノハに追い討ちをかけるようにローの舌が口内へ入ってくる。
「んんっ…、はっ…、ちょっ……ろお…さ、ん…」
歯列を割って入ってきたローの舌は、いとも簡単にコノハの舌を絡め取り、行き場を無くした唾液が口から垂れる。
「ふっ…、んっ……」
初めて経験するそれにフワフワする感覚を覚えたコノハは、呼吸の限界を伝えようとローの胸を叩くと、名残惜しそうに唇を離される。
「……はあっ、はあっ…っ。…なにっ、これ……?」
初めての感覚に戸惑いながら酸素を目一杯肺へ送り込む。
「…はっ、なんて面してやがる。」
涙目になりながら肩で息をし自分を見上げるコノハ。
このままでは止まらなくなると思い、顎に伝った唾液を拭うと自分を落ち着かせる為にコノハを揶揄う。
「これが大人のキスだ。コノハの経験したキスとは違ェだろ?」
ニヤリと笑うローは、捕食者の顔をしていた。