第4章 生まれて初めて一目惚れというやつをした
「…俺は、…お前を初めて見た時、生まれて初めて一目惚れというやつをした。」
そうだ。初めて見た時目を奪われたのは、間違いなく一目惚れをしたからだ。
最初はお前の容姿に惹かれた。
だけど要所要所で見る芯の強さ、優しさ、コノハの内面を知るごとに惹かれていく。
俺だって人を本気で好きになったことがない。
愛するという感情も知らない。
かつて自分を愛していると言ってくれたあの人は、もうこの世にはいないのだから。
このままコノハを自分のそばに置こう。
そう思っていた時、コノハが口を開く。
「…っ。…ローさん、ありがとう。すごい嬉しい…。でも……、明日出航なんでしょ?これから離れ離れになるのに、そんな事を言われても、ただ苦しくなるだけだよ…っ。」
定番ともいえる目に涙を浮かべるコノハの姿。
その姿を出会ってから今の今まで何回見ただろうか、何度見ても慣れないそれにため息を吐く。
「…離れ離れになる必要がどこにある。お前は俺の船に乗ればいいだろう。」
予想外の言葉に驚いたのか、一度自分を見ると再び前を向くコノハ。
「…船には乗らないよ。島からも出ない。」
突然発せられた言葉に胸がざわつく。
「…お母さんが連れて行かれる時、海軍の人は時期が来たらお前を迎えに来る、とだけ言ってそのままお母さんを連れて行ったの…。その時期がいつなのかは分からないけど、もしもその時…、ローさんと一緒にいたら、迷惑をかけちゃうでしょ、そんな事は絶対嫌なの…。だからー
「…もういい。お前はいつか自分を連れていく海軍のせいで俺に迷惑がかかると思っているんだな?それは何故だ。お前が引き金になって戦うことになるからか?
……なら言わせてもらうが、俺は海賊であるが故に元から海軍とも政府とも敵対する立場だ。お前がいようがいなかろうが、どっちみちお尋ね者なんだ。
…だからお前のせいで迷惑がかかるなんか思わねェ。」
気付いたら言葉を遮るように啖呵を切っていた。
横に座るコノハに視線を向けると、膝を抱えて顔を伏せている。
居ても立っても居られなくなり、両腕で彼女を包み込むロー。
力が入っていたコノハの体は優しく包み込む腕に安心したのか、段々と力が抜けていった。