第4章 生まれて初めて一目惚れというやつをした
その日の夜、ローはコノハの家に向かっていた。
ローによる公開人体実験の後、コノハに心臓はちゃんと返すべきという提案を嫌々ながら聞き入れたロー。
そんな事では余計に腹の虫は治らないので、男の船に乗せてある宝という宝全てを奪うと、村の人たちの要望もあって全員拘束は解かず船に乗せそのまま海に流した。
運が良ければ誰かに助けてもらえるだろう、悪ければ海の藻屑になって己の行動を後悔すればいいと村の連中は口々に言うが、ただ1人浮かない顔をしていたコノハに、夜自分一人で家に行く事だけを伝えるとその場を後にし船に戻った。
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言いたい事に聞きたい事、それらを頭の中で整理をすると玄関の扉をノックする。
中からパタパタと走ってくる音が聞こえ、扉が開くと石鹸の匂いと共に出てきたのはこの家の主であるコノハ。
どうぞと自分を招く彼女の家に足を踏み入れると、美味しそうな匂いが家中に漂っている。
テーブルの上に置かれているのは、コノハが作ったであろうご馳走。
「…あ、えっと…、明日この島を出るんだよね?お別れの挨拶にと思ったらなんかたくさん作りすぎちゃって…」
自分の作った料理を見つめたあと、明日お弁当にして持っていく?とこちらに微笑む。
「…あぁ。明日出航の予定だ。残った分は弁当にしてくれるとアイツらが喜ぶ。」
ローの言葉に少し悲しそうな目をするコノハは、無言で頷くと椅子に腰掛ける。
それを確認するとローも向かい合う形で食卓についた。
食事を終え、初めて会った日と同じように一緒に食器を片付けた2人。
ソファーに腰を下ろすも、沈黙がしばらく続く。
「…なァ。」
「…あのっ。」
沈黙を破るようにして発した言葉はお互いの声で消える。
「…お前、何故泣いている。」
ローの言葉にハッとするコノハは、驚いた顔で自身の目元を手で確認する。
「っ、あれ?なんでだろう…。なんか、明日出航なんだと思うとちょっと寂しくなっちゃった…、のかな?」
困ったように笑うコノハの顔をしばらく凝視すると、家に来た理由を話し出すロー。
「…俺がここに来たのは、お前に聞きたい事と伝えたい事があるからだ。」