第4章 生まれて初めて一目惚れというやつをした
「…いいか、もう泣くな。」
頬に触れていた手を離し、一番重要なことを聞こうと思ったがふと時計に目をやる。
「コノハ、俺はどれくらい眠っていた。」
ローの目の先にある時計を見ると針はてっぺんを指している。
「家に来たのが21時頃だったから、多分3時間くらい…?」
あやふやな答えに眉間に皺を寄せると、そういえばコノハも寝ていた事に気付く。
ごめんねと謝る彼女の頭を撫でベッドから抜け出すと、まだ寝てないとと立ち上がるコノハの腕をひく。
「…お前に聞きたいことがある。だが今はそれどころじゃねェ。うちのクルーを村に向かわせて3時間は経っている…。アイツらは弱くねェが、帰ってこないのを考えるとムカつく野郎と何かあったに違いねェ。このまま1人で向かいたいと考えていたが、お前も付いてこい。」
「確かに…!私も行く!」
掴んでいた腕を離すと家を後にし走る2人。
村に向かう道中コノハが何度か躓き、あまりの鈍臭さに見ていられなくなったローはコノハを片手で肩に抱き上げると、急いで村に向かった。
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「………おい。」
地を這うような低い声に酒場にいた全員が身を固くし、声の方に目を向ける。
そこにはこめかみに青筋を立て、怪訝そうな顔で女を片腕に抱き上げるローの姿。
誰が想像していただろうか。
勢いよく扉を開けると目に飛び込んだのは、村の男たちと腹踊りをする自分の部下3人。
テーブルに置かれた酒のグラス。酒場に漂う酒の匂いに、真っ赤な顔。
3人が酔っ払っているのは一目瞭然。
酒場の隅には、自分に毒を盛った張本人とその仲間たちが縄で縛られ不服そうに座っている。
「あれっ、キャプテン治ったんスか〜?」
一度言い訳を聞こうと思った自分が馬鹿だった。
シャチの一言に不気味な笑みを浮かべるローが、おもちゃを見るような目で3人を見る。
「…弁解の余地はねェな。まぁ、いい。お前ら馬鹿3人からだ。今すぐ外に出ろ。一度体をバラしてやる。…フっ。痛いようにはしねェ。…言い訳はそれからだ。」
文字通り「怒り」という言葉がピッタリなローによって行われた人体実験は朝まで続いた。