第4章 生まれて初めて一目惚れというやつをした
「……どういう意味だ。」
酒に毒を盛られた事はムカつく野郎が現れて瞬時に理解した。
コノハを人質にすると聞いた時、何故コイツを庇うように自然と体が動いたのかは不明だが、ここに移動した理由は薬屋のじじいが言っていたように、解毒ならコイツに任せられると思っての行動だ。
それなのに、薬で解毒したわけではないような言い方をするコノハ。
確かに薬で解毒したなら自分の体ともいえど、多少は怠さなどが体に出るはず。
まるで一晩しっかり寝たように回復している自分の体を起こし、隣に座るコノハを見ると、とめどなく涙を流している。
「…っ、どういう意味って、そのまんまだよっ…。っ、だって…、解毒するっていったって、何の毒かも分からなかったからっ…。私にもっと知識があれば、きっと薬で対処できたはずなんだけど…うっ……、ローさんの冷たくなっていく体に、…もう、私に出来ることはこれしかないって、思って…、それで力を使ったの……。」
あぁ、確かにそうだ。
意識を手放す手前、盛られた毒を言いかけてそのまま意識を失って伝えられていなかった。
恐らくベポ達も何の毒を盛られたかは知らないし、あの取り乱しようを思い出すと、急いで酒場に向かったんだろう。
苦しんでる人間を前に成す術がなく不安で泣いていただろうコノハを思うと、酷く心が痛んだ。
「…悪かった。本当は心当たりのある毒をいくつか伝えようとしたんだが、言う前に意識が飛んだ。」
「うぅっ……。何か…言いかけていたのは分かったんだけど…、っ、きちんと聞き取れなくて…っ。…ごめんなさい。」
そもそもの原因は喧嘩を売り、医者であるにもかかわらず毒を盛られた事すら気付かなかった自分自身にある。
それなのに大粒の涙を流し、謝る彼女を気付いたら抱き締めていた。
「……なぜお前が謝る。全部俺のせいだ。」
心臓がうるさいほど脈を打ち、自分の胸に収まっている彼女に聞こえるんじゃないかと思うと、余計に鼓動が早くなる。
胸の中で啜り泣くコノハの肩を押し目線を合わせると、頬に伝う涙を指で拭う。
「…ローさんは、悪くない。私のせいだから…。」
尚も謝る彼女の頬を指で軽く抓ると、痛いよと身を捩りながら笑うコノハの姿に胸が熱くなった。