第4章 生まれて初めて一目惚れというやつをした
「…もう、自分には何もできない……。」
流れた涙は握っているローの手を濡らす
熱も測って体温を下げるように冷却もした。
何の毒かは分からないけど、毒全般に効く解毒薬も飲ませた。
今自分が出来る事は全部した。
それなのにローの症状は一向に良くならず、悪化していくばかり。
「…っ、なんでこんなことになっちゃうの。私はローさんの手を握る事しかできない……っ。お願い、目を覚まして……。」
胸を上下しながら短い呼吸をするローに、額から噴き出す汗を拭き、ただ手を握ることしかできないコノハ。
どれくらいそうしていただろうか。
段々と冷たくなってくる彼の手を握っていると、ある事に気付く。
それはさっき自分の口から出た言葉
「……手を握る…。…願う…。」
大きく息を吸ってもう一度ローの手を握り直すと、目を閉じ解毒と体の回復を願った。
茹だるような暑さの中、砂漠を彷徨っている。
水を求め歩き続けると、目の前には湧き上がる水。
その水に近付くと体が一瞬にして冷え、そのまま体温が限界のところまで下がっていく。
ここまでだと諦めようとした時、後ろから自分の名前を呼ぶ声がした。
振り向くと大きな目から大量の涙を流し、自分の名前を呼び続けるコノハの姿。
もう泣くなと手を伸ばそうとしても全く動かない腕。
感覚のない腕に目を向け、左腕が痺れている事に気付きこれが夢だと理解した。
「ッ…。」
ほのかに石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。
安心する香りをもう一度吸い込み目を開けると、目の前には自分の左手を握ったまま寝ているコノハの姿。
痺れていた感覚はこれが原因だったのかと理解した。
泣いていたのか彼女の頬には涙の跡がついている。
「……コノハ。」
ピクリとまつ毛を動かしゆっくりと目を開けるコノハは、握っていた手を離すと、安心したのかローの首元に抱き付く。
「良かった……!おはよう、ローさん。」
されるがままの行動に目を見開いていると、満足したのか離れていくコノハ。
離れて行く石鹸の香りに、どんな顔をすればいいのかと目線を下に落とすが、彼女の一言を聞いて思わず目線を上げてしまう。
「…私の力、…ちゃんと使えたよ。」