第1章 てめェ何しやがる
「ひげじい、おはよう!」
「はいはい、コノハ、おはよう。
今日も一日よろしく。」
10歳で両親と引き離され、この先どう生きていけばいいかと途方に暮れていたら、村で薬屋を経営しているおじいさんが面倒を見てくれることになった。
私の両親とは昔から付き合いがあり、よくしてもらったから、とただその理由だけで生活に必要な分の食料やお金をくれると言われたが、子どもながらにもただ貰うだけは申し訳ないと思い、その代わり薬屋のお手伝いをするという提案をすると、快く了承してくれた。
「はいはい、これが今日の分の薬ね。」
ひげじいから渡されたメモを受け取ると、奥の部屋に行って薬草が入っている瓶を取り、近くの作業台で作業をする。
10歳の頃から手伝っているのでそれなりに薬の知識もあるつもりだ。
だけど、この小さな島だけだと得られる知識も限られる。
世界中を回って薬だけじゃなく、自分の能力も含め色んな知識を身につけたいと考えていた時、薬屋の入り口が勢いよく開いた。
「ひげじい大変だ!!!コノハちゃんはいるか?!」
大きな声で入ってくる村の人。
あまりの大きな声に体が飛び上がり、持っていた瓶を落とすところだったが、なんとか持ち直し急いでその声の元に向かう。
「どうしましたか?!私ならいます!」
「ああ、大変だ!海賊がいきなり上陸したと思ったら、島中の家に勝手に入り込んで、金目になるものを奪っているんだ!」
その言葉に、心臓が鷲掴みされたかのような痛みが走る。
どうかあれだけは無事でありますようにと心で願うも、この後に聞いた言葉で膝から崩れ落ちそうになった。
「コノハちゃんの家にも入ったらしくて、ネックレスを盗んでやったって大声で叫んでたらしいんだ!!」
あれは…私と両親の唯一の繋がり。
それを盗まれたのなら私に残されているのはもう何もない。
今にも流れそうな涙をグッと堪えると、ひげじいに持っていた瓶を押し付けるように渡す。
「ごめん!」
それだけ言い残すと、震える膝に力を入れてコノハは薬屋を飛び出した。