第3章 船長命令だ
尚も笑う老夫は蓄えたヒゲを触りながら続けて言った
「あの子が誰かに自分の秘密を話すことはまず、無い。
だから君に自分の全てを話したと聞かされた時は、驚きで天に召されるところだったよ。あの子が許した相手なら…船長さん、君に彼女を託したい。どうかこの島から出してあげてくれないかね。
あの子は薬の知識や自分の力についてもっと知りたいと思っているだろうが、この島では限りがある。それもあの子は分かっているだろう。……純粋すぎるが、薬の知識と調合の腕はワシが保証する。」
どうか彼女を連れて行ってくれと言い残しカウンターに座る老夫の背中を見届けると、酒場の店主が持ってきた新しい酒を口に含む
「…っ!?」
ガタンと店内に鳴り響く音。
笑い声や話し声で溢れていた酒場が一気に静まり返り、一同が一斉に音の方へ目をやると、テーブルに上半身を伏せ、苦しげに呼吸をするローの姿
「「「キャプテン!?」」」
腹踊りをしていたクルー達と、それを見て涙を流しながら笑っていたコノハがローの元に駆け寄ろうとすると、勢いよく酒場の扉が開く
「よぉ。昨日はどうも、だな?」
そこには昨日村の住民の金品を奪った張本人が腕を組みながら、ニヤついた顔で立っていた
「おぉっと、動くなよ?昨日は怪我をさせられたんでな、ちょ〜っとムカついて仲間にお前らの行動を監視してもらったら、ここに来る事が分かったんでね?ここの店主の息子を人質に、黙っているよう言ってそこの酒に毒を入れさせてもらったのさ。」
次の人質はお前だなとコノハを見る人物の言葉の意味を理解したローは、瞬時に大きなサークルを広げると、器用にも自分達だけを昨日訪れた場所に飛ばす
「…っえ?なんで私の家に!?」
毒による体力の消耗を感じつつも、残った体力で能力を使ったローはその場に倒れこむ
急な展開に頭のついていかないコノハだったが、事の重大さに気付きクルー達に自分のベッドにローを運ぶよう指示をする。
3人がかりでローを抱え上げ、なんとかローをベッドに横にすることができたクルー達は、心配以外のなにものでもない表情を浮かべる
「キャプテン、大丈夫!?キャプテンに何かあったらボクたちどうしたらいい?」
「そうっスよ、キャプテン!なんか、なんか、言ってください!」
「キャプテンっ…!」