第3章 船長命令だ
「……っ、お前らうるせェぞ。…ハァっ……、こんな事でいちいち騒いでんじゃねェ。くっ……、いいか、よく聞け。」
肩で息をするローに、ただ耳を傾けることしかできない3人
「…っ、お前らは酒場に戻ってあのムカつく野郎を縛り上げて来いっ……、…っ俺はここでコノハに解毒してもらう…っ。
くっ…。あいつらの事だ、俺らに恩を感じて村総出であのムカつく野郎に反撃するつもりだろう。…ハァッっ…っっ…、シャチ、っお前の言う通り、村のヤツらは俺たちを大恩人だと勘違いしてやがるっ…。…っ、結果的には間違っちゃいねェ…。……クッ…、だが俺たちは確かにあいつらの物を横取りしようとした。
俺たちも本当の事を言ってないから仕方ねェが、あいつらは村全体で俺たちを歓迎してただろ…。……っ、そこまでされておいて、見放すほど俺は冷酷な男じゃねェ。」
呼吸するのが辛いのか、時折詰まらせるように話すロー
「…っ、それに俺はなにも計算なしで言ってるんじゃねェ。コイツなら解毒できるだろう。それに、奪うものはもう奪っている。」
震える手に持つのはいつの間に抜き取ったのかキューブ型の波打つ心臓。
「…クッ、……っ、こっちの事はお前に任せる。お前らは、先に酒場に行け……。…船長命令だ………っ。」
今にも泣きそうな顔で自分を見るコノハに、小さな声で頼んだと告げると何かを言いかけ体力の限界なのか意識を手放すロー。
「と、とりあえず、オレらは行ってくる!コノハ、キャプテンを頼んだぞ!」
ローの手から心臓を受け取ると、家を飛び出す3人。
目の前には苦しむローの姿。
急ぎ足で薬品棚に向かうもある事に気付く
「……待って。解毒するって言ったって、そもそもなんの毒なの?それも分からないんじゃ解毒のしようがない…。」
一刻を争う解毒作業。
少しの時間ですら惜しいのに、肝心の毒が分からないんじゃ、解毒もできない。
自分の非力さに涙が頬を伝い、薬品棚の前に立ちすくむコノハ。
何を根拠にローは自分を頼りにしたのか分からないし、せっかく頼ってもらえても、自分じゃ力になれない。
静まり返った家の中で聞こえるローの苦しそうな呼吸音
その音にハッとし、涙で濡れた頬を拭うと長い髪を一つにまとめ急いでローの元へ駆け寄る
「…まずは、症状の確認……!」