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魔法の手【ONE PIECE】

第15章 どなたでしょうか



心に引っ掛かっていたものがなくなり、ローは足早に部屋から出て行った。

こう気分が良いと部屋に篭っているのが不思議と惜しく感じるもの。


時刻は22時。
コノハはもう寝ているだろうと隣の部屋の扉を一瞬視界に入れ、軽い足取りである場所へ向かった。


この船の要。
そう、操舵室だ。


操舵室に着くと、何やらベポがハクガンに教えていた。
ハクガンは真剣にベポの話を聞きながらも、手のひらサイズのメモにペンを走らせている。

そんな2人を邪魔しないよう、ローは扉に体を預け腕を組んだ。


ハクガンをイムサ島で拾ってしばらくしてから、ベポからハクガンを操舵手にしたいと言われた時は一瞬驚いたが、どうやらハクガンにはその才能があるらしい。

「そうそう、それで…」

学ぶ者の姿勢が良いと教える側も気合が入るのだろうか、ベポも熱心にそれに応えているように見える。

基本的には放任主義のローだが、自分の知らないところでこうして部下達が切磋琢磨しているのはやはり嬉しいのか、その顔は穏やかだ。


するとメモの上を走っていたペンの音がピタリと止まった。

見ればハクガンがベポに親指を立てている。

それを確認したベポはすぐさまこっちへ向かってきた。

「キャプテンどうしたの?」

「すぐ終わる、ちょっと来い。」

そう人差し指で招かれベポはローの後を追う。


そして、廊下に出るとすぐさまローがこちらへ振り向いた。

「今日は…助かった。」

そう言って背中を向けられる。

言葉足らずなのは昔から。
それでも、付き合いの長いベポはこんな短い一言に様々な感情が詰め込まれているのを見逃さなかった。

「うん、また何か手伝えることがあったら言ってね。」

ローの中で何かがあったのだろう。
そう感じたベポはこれ以上のことは口にしない。

「あぁ。邪魔して悪かったな。」

「ううん、大丈夫だよ。おやすみなさい。」

そう短く会話を交わし、互いに踵を返す。


ロー自身、ベポのこういうところには昔から助けられている。
自分の表情や言葉で何かを察し、その上あまり詮索をしてこない。

打たれ弱いところは玉に瑕。
だが、世界中探してもこんなに気が効くクマはいないだろう。

そんな事を思いながらローは梯子を登っていく。

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