第15章 どなたでしょうか
その後、コノハはローに早く休むよう即され船長室を後にした。
「ん〜〜!」
そして現在。
風呂を済ませ、言いつけ通り自室に戻ってきたところだ。
大きく伸びをし、首に掛かるタオルで髪の水分をぎゅっと絞る。
そして履いたばかりのズボンを早々に脱ぎ、よろめく足でなんとかベッドに上がった。
「ふー…」
疲労感がどっと押し寄せ、無意識に背中を壁に預ける。
やっぱり、イッカクやキャプテンに言われた通りだ。
体力は元からある方では無い。
それに加え1週間も寝ていたのだ。
以前と比べて確実に体力が減っているのを今日一日で痛感した。
正直なところ、今も起きているのがやっとなくらい。
「すごいなぁ、あの2人は。」
食欲の有る無しが健康のバロメーターになっているのは自分でもちょっと笑ってしまうけど…
イッカクももちろんのこと、驚くべきはキャプテンである。
何も言ってないし、顔に出したつもりも無い。
それなのに食欲が無いこともやっぱり見抜かれていた。
敵わない。
あの瞳で見つめられると心の奥底まで覗かれているような、そんな錯覚に陥ってしまう。
まるで嘘をつくなと言われているような。
『お前の考えていることなら大抵分かる。』
昨日言われた一言がずっと引っかかったまま。
少し前の私とキャプテンはそんな親密な関係だったのだろうか?
それとも単に私が分かりやすいだけ?
「う〜〜ん…」
遂に体が限界を迎え、ズルリと背中がベッドに沈んだ。
それに、さっきのあの表情は一体なんだったんだろう。
思いがけず手を伸ばしてしまったけど…
昨日目を覚ました時と同じ。
何かに責められているような、そんな目だった。
余計な一言かもしれないけど、キャプテンの目つきはお世辞にも良いとは言えない。
でも…あの目は別。
目つき云々とかでは無いような…そんな気がするのだ。
「はぁ…」
恋人のことも気になるし…
頭の中の糸が複雑に絡み合っていく。
記憶さえあれば。
それさえあれば、この心のモヤモヤも無くなる筈…だよね……
徐々に重くなっていく瞼。
コノハの体はとうに限界を迎えていた。
あぁ、まだ考えたいことが沢山あるのに…
それでも睡魔と疲労には勝てず、コノハはゆっくりと瞳を閉じた。