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魔法の手【ONE PIECE】

第15章 どなたでしょうか



「キャプテン…時折そういう目をしますよね…」

次の瞬間、小さな手に頬を包まれた。
星のように澄んだ瞳に見上げられ、ローが息を呑む。

「……ッ!!」

それはずっと待ち望んでいた、柔らかく春に吹く風のような温かい手。

安心する石鹸の匂いが鼻腔に届き、このまま目を瞑ってしまいたいとさえ思えた。

「コノハ……」

しかし、目の前の大きな瞳に映る自分の顔に一気に現実に引き戻される。

「取って食っちまうぞ。」

冗談と本音を半々に。
優しく指でおでこを弾く。

「ぁ…えっ!?す、すいません!」

そう言っておでこをさすりながら、コノハはまたソファーに座った。


「お前はもっと自覚した方がいい。」

自分が女であることを。

よくよく考えてみれば今だっておかしな状況だ。

部屋に男と2人きり。
過度なボディータッチ。

他の男なら間違いなく取って食われてるだろう。

「え…?」

しかしその思いは届かず。
首を傾げるコノハにローはこめかみを揉んだ。

「いや、なんでもねェ。」

そして溜め息混じりに呟いた。

まったく、人の気持ちも知らないで…


「それにしてもあれですね…」

ローの心の内など全く知る由もないコノハは、目を輝かせながら部屋中を見渡した。

「次はなんだ。」

また突拍子もないことを言い出すに違いないと、呆れた目を向ける。

「すごい数の本ですね。」

(相変わらず表情も話題もコロコロと変わるもんだ…)

「まァ…ほとんどが医学書だけどな。」

「医学書…」

本棚に並ばれた本。
床に高く積まれた本。

これらのほとんどが医学書だなんて…

「キャプテンー

「ダメだ。」

「えっ?」

まだ何も言っていないのに。

「どうせ借りたいとか言うんだろ?」

どうして、この人は……

「むぅ…」

一本取られたとコノハが眉尻を下げる。

「お前のことだ、本なんか貸しちまったら寝ずに読み漁るだろ。そんなに見たいなら…毎日読みに来たらいい。」

「えっ…!」

たちまち開かれる目。

「ありがとうございます…っ!」

その笑顔のなんて可愛いことか…

眩しいくらいの笑顔を向けられ、ローは思わず目を細めた。

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