第15章 どなたでしょうか
コノハの答えに満足したところで、ローは目の高さに合うよう体を屈ませた。
「そういえばお前…体調はどうだ?」
ここへ来てからずっと気になっていた。
「どうって…元気いっぱいですよ!」
コノハは急なことに目を見開きながらも笑った。
しかしローの方が一枚上手。
その顔に疲れが見えているのを見逃す筈もなく…
「…そこに座れ。」
ため息混じりに顎でソファーを指せばコノハは戸惑った表情を見せながらも大人しく座った。
「私、元気ですよ…?」
「自分でそう思っているだけだ。なら聞くが…食欲は?」
「えっ?食欲ですか…」
貼り付けたような笑顔が崩れる。
一瞬、嘘をついてしまおうかとそんな考えが頭を過ぎった。
でもこの人には全て見透かされてるような気がして…
「あんまり…ないです…」
やっぱり嘘をつくことはできなかった。
「…だろうな。普段大喰らいのお前が食欲無ェなんてよっぽどだ…それほど体が疲れているって事だろ。」
あぁやっぱり…
この人は…
「そうですね…その通りです……」
私よりも私のことを知っている。
観念したようにコノハがポツリと呟いた。
「無理だけはするんじゃねェぞ、いいな?」
こんな言葉に効力がないことくらいローには分かっている。
それでも小さく頷くコノハを見て、ひとまず胸を撫で下ろした。
「あの、キャプテン…」
しばらく黙っていたコノハが口を開いた。
「…どうした?」
数秒前とは打って変わって真剣な顔。
机に腰を掛けていたローの体が傾く。
「あの……命を助けていただいて、ありがとうございました。あと、今日のツアーも…キャプテンの提案だってペンギンが教えてくれて……あのツアーのお陰で私、本当にみんなの仲間だったんだって気付けたんです。」
コノハは嬉しそうに目尻を下げた。
しかしローの顔には影が掛かっていく。
「いや…」
命は助けた。が、あの時のお前を助けてやることは出来なかった。
提案だって俺がしただけで実際に行動したのはあの3人だ。
俺は何もしちゃいない。
本当に…
「俺は何も…」
そう言ってローは口を噤んだ。