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魔法の手【ONE PIECE】

第15章 どなたでしょうか



「もう…!」

キャプテンってば、馬鹿にして…!
いちいち馬鹿にしなくてもいいのに……!

むくれたコノハはヒョイと顔を背けた。


しかしローはそんなコノハを目を細めながら見ている。

少し揶揄っただけなのに髪の隙間から覗く耳は顔と同様に真っ赤。
こんな初々しい反応を見せられては、愛おしさが増すばかり。

(まったく…)

一体何を勘違いしているのやら…
その挙動一つ一つが俺の心を掻き乱しているなんて知りもしない癖に。

ハァとため息を吐きながらおにぎりを一つ手に取る。

「あっ…」

そしてコノハがこちらを見たのと同時に一口齧った。


しっかり握られていたおにぎりが口の中でほろっと解けていく。
舌の上に転がる米は絶妙な塩加減で味付けされていて、疲れた体によく沁みる。

特段お腹が空いていたワケでもなかった。
でもやはり食べ慣れた味だからか…ローの手はどんどん進んでいった。


咀嚼音だけが部屋に響き、3つ握ったおにぎりが1つ、また1つと消えていく。


「…美味かった。」

手の甲で口を拭うローの表情は非常に満足げである。

「……良かった…!!」

むくれていた事など既に過去のこと。

ローの一言でたちまちコノハの顔に花が咲いた。

もしかしたら口に合わなかったのではと少し不安に思っていたところ。
だって何か言うわけでもなく、表情を変えるわけでもなかったから。

「お前が作るメシは本当に美味い。…これからも頼む。」

「えっ…」

これからも…
それは未来を意味する言葉。

「なんだ…。ダメか?」

眉間に皺を寄せたキャプテンと視線が交わり、急いで首を振る。

「…い、いえ!」

キャプテンが思い描く未来には当然のように私がいる。

そう思ってくれているのが単純に嬉しくて…

「これからも作ります…!」

とびきりの笑顔を向け頭を下げた。

キャプテンの…いや、この船の皆の役に少しでも早く立ちたい。

そんな気持ちが行動に現れたのかもしれない。

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