第15章 どなたでしょうか
昨日の夜。
クルー達を食堂に集めたローは3人にこう言った。
『明日…コノハにちょっと時間を割いてくれねェか。」
ローが伝えたのはその一言だけ。
それでも古い付き合いの3人はそれだけで十分だった。
孤独を感じているであろうコノハに、自分たちは仲間でここは安心できる場所だと伝えたいのであろう。
そう悟った3人はもちろん了承した。
「まぁ、そんな感じ。だから俺たちが持ちかけた話じゃなくて、あくまでも言い出したのはキャプテンなんだよ。ま、"古参によるリハビリツアーってのは俺が付けた名前なんだけどな!」
「そ、そうだったの…。」
話の前半部分が衝撃すぎてコノハの耳には後半の部分など聞こえていない。
「キャプテンが…」
まさか言い出したなんて…
「お前、そこまで言っていいのかよ?」
「大丈夫だって。記憶喪失のクルーを気にかけるなんて、別に相手がコノハじゃなくてもキャプテンならやりそうだろ?」
「う〜ん…そうっちゃそうだけどよ…」
いくら小声だからといって、聞こえてしまった時の心配はないのだろうか。
「…ハァ。」
シャチとペンギンの会話にベポは深いため息を吐いた。
「あ、あれっ…!?」
しばらく黙っていたコノハが急に立ち上がった。
「な、ななな、なんだ!どうした!」
まさか聞こえていたのではとパニック気味のペンギン。
「あれっ、キャプテンは…!?今、お礼を言おうとしたんだけど…そういえばご飯中一回も見てない…」
「あぁ、そんなことか。」
クールに装うも内心ドキドキである。
「普段なら揃ってメシ食うんだけどよ、来ないってことは多分部屋で寝てるんじゃねぇか?」
コノハが居るのに来ないなんて理由はそれしか思いつかない。
「そっか…。あ、でもキャプテンのご飯どうしよう…?お米くらいしか残ってない…」
「ん〜…なら、おにぎりかなんか作って持ってけばいいじゃねぇか。」
「あっ、そう…だね。じゃあここを片付けたらー
「いーま!今今今!ここは俺らがやっておくから!」
「で、でもー
ああ、なんて焦ったい!
「「「いいから!!!」」」
「わ、分かった…!じゃあ、よろしくね?」
さすがのコノハも全員の気迫に驚いて、逃げるようにキッチンへと走って行った。