第15章 どなたでしょうか
それから数十分後…
コノハの横にはイッカクが座っていた。
むさ苦しい男ばかりのこの船。
女同士である2人は既に心を開いている。
「もうお腹いっぱい…」
「あら、珍しい…。ま、でも1週間も寝たきりだったもんねぇ。」
「珍しいって…やっぱり私って前もよく食べてた?」
「うん、そりゃもうたーくさん食べてたよ!」
「ふふ、そっか。」
もしかしたら以前のような食欲は無くなったのではと、少し期待もしたけど私の大食いはやっぱり変わっていなかった。
イタズラに笑うイッカクに誘われ、コノハも笑みを浮かべる。
「でもそうでしょ?昨日起きたばかりで病み上がりなのに洗濯や掃除だってしてくれてたし、ご飯だって作ってくれて…」
体が疲れてるのよとイッカクの優しい手が背中に触れた。
「全部ゆっくりでいいの。少しずつ少しずつ…ね?」
どうしてこの人たちはこんなにも優しいのだろうか。
少しでも油断したらその優しさに泣いてしまいそうだ。
「イッカク…大好き…!」
でも、今泣いてしまったらせっかくの楽しい時間がもったいない。
隣に座る彼女へ腕を回し、細い腰をぎゅっと抱き締める。
「私も大好き…!!」
お返しと言わんばかりの力強い抱擁。
イッカクの事も、みんなの事も、今日一日で大好きになった。
記憶は無くても本能が覚えていたのかもしれない。
「みんな、今日はありがとう。」
そんな本能のままにコノハが立ち上がった。
コノハの言葉にクルー達の手がピタリと止まる。
「なんだよ、急に!」
「みんなのお陰で、私はみんなの仲間だって信じることが出来たから…。特にペンギンとシャチとベポ…」
言わずにはいられなかった。
もちろん他のクルー達もそうだけど、この3人がツアーをやってくれたお陰でもあるのだ。
「なに、俺たちが持ちかけた話じゃねェよ。」
「え?」
てっきり3人が考えてくれたものだと。
"古参によるリハビリツアー"っていうのも、なんかペンギンが付けそうな名前だし……
「じゃあ一体誰が?」
「いやー、実はさ…
少し悪い顔をしたペンギンが口を開いた。