第15章 どなたでしょうか
"古参によるリハビリツアー"も無事に終わったその日の夕方。
コノハはというとキッチンにいた。
「よし…っと。」
最後の一仕事を終え、ホッと一息。
食堂に掛かる時計はもうじき18時になろうとしている。
「もうすぐかな…」
その言葉を待っていたかのように次第に慌ただしくなっていく船内。
こちらに向かって来る大量の足音。
コノハは今か今かとその時を待っていた。
バタンッ
「腹減ったーーーーーーーー!」
「コノハのメシ久しぶり!」
「早く食いてー!」
扉が開くと同時に押し寄せる人の波。
1人、また1人とご馳走に吸い寄せられていくのはこの船のクルー達だ。
こっちこっちといつの間にかコノハも手を引かれ、長いテーブルの前に腰を下ろす。
「やっとコノハが作ったご飯が食べられる…!じゅる…」
ヨダレのような音が聞こえたのはさておき、隣に座るベポの目が、見た事ないほど輝いている。
「ヨシ!全員いるな。…えっと、まずはコノハ!メシを作ってくれてありがとな!」
急に立ち上がったシャチ。
「いいえ、とんでもない!」
改めて言われるとなんだかくすぐったくて、コノハの目尻が下がる。
「さっきは急に食堂に来たからビックリしたよ。全部やるから誰も何もしなくていいって言うんだもん。」
「そーそー!好きなことしてろってな。相変わらずそういう所あるんだよな。」
今日の炊事係であるイッカクとペンギンはどこか嬉しそう。
「ずっとみんなに負担かけてたからね。今日からまた私が作るよ!」
穴を開けた分、しっかりと。
「コノハがまたこうしてー
「もう待てねぇよ!いっただきます!」
「「「いただきます!!!」」」
「おいコラ!お前ェら……ったく、……いただきます!」
シャチは誰1人として話を聞こうとしないクルー達に呆れながらも手を合わせた。
「ふふっ」
ご飯一つ食べるにしても忙しない彼ら。
それでも、やっぱりこの空間は心地が良いもの。
それにしても…
こんな大勢でご飯を食べているなんて現実味があまり無くて、まだ夢の中なのではと疑ってしまうほど。
「…うん。夢じゃない。」
頬を抓るとちゃんと痛いし、目を擦ってもみんながいる。
それじゃあ…
「いただきます…!」