第15章 どなたでしょうか
1人取り残される形となったコノハは、いつの間にか周りにいたクルー達に囲まれていた。
どこかに連れて行かれたシャチは大丈夫だろうか…
クルー達と話しているコノハの頭の中はさっきからその事でいっぱいだ。
「コノハ〜〜。」
と、誰かの呼ぶ声。
「あ、ごめん、あっち行ってくるね!」
コノハは誰が呼んでいるのかなんて、これっぽっちも思わなかった。
この声は…
「ベポーーーーーっ!!!」
忘れてたまるもんか。
目を覚ました時に一番に聞こえた声なんだから。
「久しぶ、り…?」
「久しぶり〜〜」
このツアーの大トリであるベポは小さな体を目一杯受け止めた。
こうしてコノハと抱き合うのは久しぶりだ。
「ふふ、フワフワ気持ちいい〜」
「あっ、それコノハと初めて会った時にも言われたよ。」
「誰でも思うよ〜」
そしてコノハは胸に顔を埋める。
あの時の温かさが忘れられなくて、コノハは一思いに白クマの温もりを感じた。
そして数分後、デッキの中央へと移動してきた2人。
「ヨイショっ」
目的地に着くな否やベポが寝転んだ。
「ふふっ」
なんて愛らしい生き物なのだろう…
自然と口が綻んだ。
「ねぇ、寄りかかってもいい?」
その気持ちよさそうなお腹に…
「もちろんだよ。」
「ありがとう、お邪魔します!」
ベポに吸い寄せられるようにコノハは温かい腹に寄りかかった。
「最高……」
なんて気持ちの良さ。
この感覚は言葉では表せられない。
「アイアイ、懐かしいなぁ。」
「ふふ、さっきシャチも懐かしいって言ってた。私ってそんなに変わらないの?」
コノハが動けばたちまち漂う石鹸の匂い。
久しぶりの香りにベポは目を細めた。
「全然変わらないよ。ボクが大好きなコノハのまんま。」
例え記憶がなくとも、コノハはコノハなんだから。
「ありがとう…。私もベポのこと大好き!」
「照れるなぁ。」
ほら、こうやって人懐っこいところも何にも変わらない。
ボクたちも、キャプテンも大好きなコノハのままだ。