第15章 どなたでしょうか
「ね、ねぇ、シャチ。力を使ったってどういう意味…?」
聞かずにはいられなかった。
私の気持ちが揺らいでいなければ…
初めて人に力を使う時は愛する人と決めていたはず……
「いや、そのまんまの意味よ。コノハのその手の力でペンギンのタンコブ治してやってたんだよ。」
違う、私が聞きたいのはそこじゃなくて…
コノハが首をフルフルさせる。
「前の私は言ってなかったかな…初めてこの手の力を使う時は愛する人に使いたいって…」
その言葉にシャチに戦慄が走る。
「だっ!あ、ああ!そ、そういうことか!」
みるみるうちに崩れていくシャチの顔。
心拍数が一気に上がり、口から心臓が飛び出そうだ。
「いや、ホラ!でもっ、お前が力を使ったのはペ、ペンギンが初めてじゃねェよ!?」
目を白黒させるシャチにコノハは首を傾げる。
「え?」
それってやっぱり…
少し前の私には愛する人がいたってこと…?
「う〜ん…」
シャチの言い方だと、私の愛する人はペンギンではない……?
やっちまったとシャチ頭を抱え、コノハはそんな様子には気にも留めず頭を捻る。
「う〜〜〜ん……。誰なんだろう…」
この船にいる誰か?
それともどこかで出会った人?
「う〜〜む……」
しかし今の自分にはそんな事が分かる筈がない。
「まぁ、今は考えても仕方ないか。」
未だ頭を抱え何かブツブツと独り言を言っているシャチは一旦さておき…
竿の確認を…
「えっ!!!えっ、あっ!ちょっ!!!!」
みるみるうちに丸くなっていく目。
自分の竿が勢いよくしなっているのだ。
「ぁあ、嘘!!こんなことって…!!」
ようやく、ようやく大物が釣れる。
しかも絶対大物の中でも大物。
興奮冷めやらぬコノハは見よう見まねでリールを巻いた。
「ふんーーーーー!」
引っ張られる体。
「んんんーーーーーーーー!」
絶対に…釣る……!
しかし、あちらも食べられるもんかと体が徐々に前に進んでいく。
「ちょっ…!引っ張られる……!シャチ!助け!て……」
って全然こっちに気付いてない!まだ頭抱えてるの!?
このままじゃ海に引きずりこまれる!
そう覚悟し目を瞑った。