第15章 どなたでしょうか
ローがベポの元で眠りに落ちた頃、コノハはこのツアーの2番手であるシャチと釣りを始めた。
「あぁー!また餌だけ持って行かれちゃった…」
「残念、次だ次!」
そう言って笑うシャチはきっと釣りの天才だ。
だってほら、始めて数分しか経っていないというのにバケツには大量の魚。
比べて私は…
「まだ1匹も釣れてない…」
バケツを何度見ても結果は同じ。
なんとも寂しいバケツである。
「まァ、そんな顔すんなって。焦らず待ってりゃ掛かるからよ。」
「う〜ん。」
でも、シャチの言う通りかもしれない。
まだ始めて1時間も経っていないのだから。
「よしっ!」
絶対大物を釣ってみせる!!
腕捲りをし、やる気に満ち溢れているコノハの姿にシャチは目を細めた。
5分…
10分…
新しく垂らした糸を眺めるコノハ。
そして自分の糸を眺めるシャチ。
この間2人の竿がしなることは無く、時間だけが過ぎていった。
なんか会話無くなっちゃったな…
ふと、隣に座るシャチを見るも彼は竿を眺めたまま。
ペンギンのマシンガントークの後だからなのか、余計静かに感じる。
でも、なんだろう…
すごく心地が良い………
「良い時間だなぁ。」
そう言ってコノハが再び前を向くと、温かい風が頬を撫でた。
「おかえり。」
え?
風と共に乗って来た言葉に顔を上げる。
確かにシャチが言ったのだろう、横を向くと彼もこちらを見ていた。
「おかえり…?」
「あぁ、おかえりだろ?1週間も眠ったままだったんだからな。」
「あっそっか。」
私1週間も寝てたんだ…
「すっゲーー長い1週間だったよ、ホントに。」
あんな長く感じる1週間は初めてだったとシャチが笑う。
「船内の雰囲気は最悪!アイツら全員口を揃えて、コノハの作るメシじゃないから美味くねェって不満ばっか垂れてたんだぜ?酷くねェか?俺とペンギンが毎日頑張って作ってたのによー!」
足をバタバタさせるシャチがなんだか可愛くて吹き出してしまう。
「ふふ、確かにちょっと酷いかも。」
でも私が寝ていた間の皺寄せがシャチとペンギンに…
「あのっ…負担をかけちゃってごめー
「やめろやめろ!謝んなって!お前はすーぐ謝るんだから!」
そう言ってシャチは右手を顔の前でヒラヒラさせた。