第15章 どなたでしょうか
ペンギンのちょっと下手っぴな口笛を聞きながら、梯子を登りデッキにまた戻ってきた2人。
「よーし、俺の仕事はここまでだな!あそこでシャチが釣りしてるから、そこまで行ってやってくれ!」
「うん!分かった!ペンギン、ありがとう!」
「あぁ!またあとでな!」
そんなやりとりをベポにもたれ掛かりながらローは見ていた。
まさか記憶が戻ったのでは?と錯覚するほどもうコノハはペンギンに心を開いている。
「いい顔してるね、コノハ。」
「あぁ、そうだな…」
コノハは不思議と人を惹きつける力がある。
そして自分とは違い、すぐ人と仲良くなれる。
かつて出会った赤髪海賊団も不死鳥のマルコも、麦わらのルフィとかいう奴も…
全ての中心にはコノハがいた。
それは決して悪いことではない。
そう分かってはいるのに、コノハに以前のように接することができないローはなんとも言えない表情でその横顔を眺めている。
「…ねぇキャプテン。ボクの代わりに"古参3人によるリハビリツアー"やる?」
人の気持ちを知ってか知らずか…
自分の下で仰向けになっているクマが楽しそうな目でこちらを見ている。
「いや、俺はいい。そもそも俺がお前らに命令したことだろ。」
「アイアイ、そうだったね。でもボクは…キャプテンとコノハが早く前みたいになって欲しいんだよ。」
ボクだけじゃない。
ペンギンもシャチも、みんなが思っているよ。
口には出さずともきっとローには伝わっている。
そう思ったベポはそのまま静かに目を閉じた。
「あぁ。」
そうだな。
俺もそう思っている。
誰よりも俺が思っているさ。
「…しかしなんだ、そのダセェ名前は。」
「…………」
「…? おい……」
「………………」
「おい、聞いてんのか。」
「…グー…………」
「ったく。」
風に乗ってきた石鹸の香りがローの頬を撫でる。
その香りに誘われるように、ローの瞳もゆっくり閉じていく。