第15章 どなたでしょうか
「少しは落ち着いたか?」
「うん…」
ようやく涙が止まった。
ペンギンは子どものように泣いていた私の涙を慌てながらも何度も拭ってくれていた。
「びっくりさせちゃってごめんね。なんか安心したら涙が出ちゃって…」
「いいんだって!謝んなよ!」
ペンギンの笑顔が眩しい。
今日だけで何度もその笑顔に助けられている。
「んじゃ、次行くか!」
そう言ってペンギンは梯子がある方へ踵を返す。
ってあれ、まだ一部屋…
「あ、あのペンギン、あそこの部屋は…?」
くるりとこちらを振り向くペンギンとまた向き合う。
「あー…あそこはキャプテンの部屋だ。キャプテンいねぇのに開けるのも悪いしな!」
いつか見せてもらえよ!と軽く肩を叩かれる。
「うん!そうする!」
「おう!さ、次はシャチの番だな!」
シャチってあの…
「サングラスをかけた…?」
「あぁ、そうだ!今日はよ、"古参3人によるリハビリツアー"なんだ。俺が最初、次がシャチ、んで最後がベポだな。」
「古参…?」
「あっ、そっか記憶がねぇんだ。なんかお前、記憶が無くても全然変わらないからいつも通り接しちゃうわ。」
それは喜んでいいものなのだろうか。
「いや、良い意味でな!」
なら、そういうことにしておこう。
「あーそれで古参っていうのはー」
記憶の無いコノハにペンギンは教えてくれた。
ローとベポ、シャチとペンギンの4人は幼馴染で、最初この船は4人しか乗っていなかったこと。
たまたま上陸した島で仲間が増えたこと。
そして、それよりも前にコノハが仲間になっていたこと。
「えっ!じゃあ私が船に乗った時はまだ4人だけだったの!?」
「あぁそうだ!今も賑やかで楽しいけど、あの時はあの時で楽しかったな〜」
楽しかった日々に思いを馳せ、気分が良くなったペンギンがコノハの前を歩きながら口を尖らせた。
〜♪ 〜〜♪ 〜⭐︎ס、っ♪〜
誰も聞いたこともない、そして絶妙に下手な口笛が船内に響く。