第15章 どなたでしょうか
そして次の日。
コノハのリハビリが始まった。
「んで、ここが甲板だ!」
しかし、リハビリというのは名だけで所詮は船内ツアーである。
それでもペンギンの横を歩くコノハは、初めて見る景色に目を輝かせた。
「す、すごい…!本当に海の上にいる…!」
天気は快晴。
タイミング良く浮上している船から見える海は、太陽に照らされキラキラと輝いている。
頭上を飛ぶカモメ。頬を撫でる潮風。
記憶の無いコノハにはどれもこれも初めての経験で、身を乗り出すように海を眺めた。
「お、おい、あんま乗り出すなよ?落ちたら笑えねぇぞ!」
刺さるような視線にペンギンは焦った。
早い時間だというのに珍しく起きているローが、ベポにもたれながらこちらを見ているからだ。
見ているというよりかは監視だろうか。
さっきからその視線がとてつもなく痛い。
「な、もういいだろ!次行くぞ!」
釘付けになっているコノハを半ば強引に引き剥がす。
「まだもう少しここに…
「また後で来よう!な?…あ、そうだ!次はコノハ!お前の部屋を見に行こう!」
この場から一刻も離れたいペンギンはあの手この手でコノハの気を逸らす。
「うん!じゃあ案内お願いします!」
「よし!じゃあ俺に着いて来い!」
こっちこっちと手招きするペンギンの後を歩くコノハ。
言われるがまま梯子を降り、一個下の階層へやってきた。
「すごい…もうここは海の中なんだ…」
廊下にある小さな窓。
外を覗けば色鮮やかな魚たちが泳いでいる。
「うわー…綺麗…」
窓に張り付き、食い入るように海の中を見るコノハ。
そんな姿にペンギンはどこか懐かしさを感じた。
ウォーターセブンでこの船を改築し、受け取った日のこと。
新しくなった船内をコノハとクルー3人が走り回り、呆れ顔のローが後ろを付いて回っていたこと。
そして物置部屋がコノハの部屋に変わり、コノハの嬉しそうな顔をみんなで見た時のこと。
「お〜い!コノハの部屋はこっち!!」
今は、あの時のコノハでは無い。
それでもキャプテンの大事な人が、自分たちの大切な仲間が、またこうして船にいるということが、ペンギンの胸をいっぱいにした。